誕生6



スコールは(雷神の)部屋に戻り狂乱バトルの疲れを癒すべくシャワーを浴び、寝た。

本当は長めのお風呂に入り体を解し癒す方が良かったが、超ヘビー級連続バトルで満身創痍になった状態で風呂に入ればそのまま意識喪失→爆睡してしまいそうで止めておいた。

とにかく魔法で回復させた分の体力を戻さなければ...と、夢も見ない真っ黒の底なし沼のような重く深い眠りに沈んでいる時、しつこく鳴る電子音に無理矢理眠りの世界から引きずり出された。


時計を見ると...ベッドに入ってからまだ時間しか経っていない。

クラウドに渡された携帯が鳴っている。

今は指一本動かすのすら強い意志が必要だ。

だが、電話の主は今スコールがそういう状態になっているのを分かっていて、それでも電話をかけているのだろう。


............はい...

電話に出なければ...とは思いながらも、それでも動き出すまでに時間が必要だった。

『ごめん。本当申し訳ない。カナリマズイ事態が起きたんだ

皆で話し合いたい。スコール部屋から出て来れそうか

.........マズイ事とは

『込み入った事情なんだ。会ったら話す。できればチョコボスクエアのチケットオフィスまで出てきてほしいんだが、来れそうか厳しいなら迎えに行く』

......行く」

『本当にごめん

チケットオフィスの直ぐ左にスタッフルームの入り口がある

アンタの話は通しておくから、そこから控え室に入ってきてくれ

名前は"スコール"で、それとできるだけ変装をしてきてくれ

色々無茶言って悪いんだが"バトルスクエアのLEON"だってバレるのが一番マズイ。面倒なことになる』

......10分くらいでそっちに着く」

『本当にすまない。待ってる』


スコールはベッドからズルズルと這い出ながら”マズイ事”と”バトルスクエアのLEON”のつながりを考えていた。

バトルスクエアでは確かに命がけで精魂尽き果てるまでぶっ殺しまくったが、あれは合法だった。

だったら何が”マズイ事”なんだ

本気で殺意を出し過ぎたのがマズかったか、露骨過ぎたか、危険人物で指名手配でもかかったのか……いや、でも合法だし。第一その場合責任を取るのは俺よりもバトルスクエアだ。

…などと考えながらも、クラウドの真剣な様子から結構本気で”LEON”を伏せなければならない事は察せられた。


ともかく昼間の自分と結びつけられないような変装・・と、旅行鞄を探そうとしたが、思えばここは雷神の部屋だった。自分のものは殆ど無い。

どうしたものかと、部屋を見渡した。


.........つ、目に付いたものがあった。


ホテルを出てターミナルにさえ入ってしまえば、あとはムーブソーサーで自動的にチョコボスクエアまで行ける。

とりあえずホテルを出た。

そしてゴールドソーサーターミナルに入るまでの徒歩移動の間、スコールは通り過ぎる人々に散々失礼で露骨な視線を執拗に向けられた。

その視線がバトルスクエアの「LEON」へのものではないのは今までの経験上分かっていたので、無遠慮な視線やナンパ、囃し立てる口笛・声を堂々と無視して速足大股で歩き続けた。

チョコボスクエアまで辿り着くと、待っていたらしいスタッフに声をかけられスタッフルーム入り口まで案内され、控え室に入ってみればクラウドとセフィロスが待っていた。

控室に現れたスコールにクラウドが驚いた表情をした。


「マズイ事とは

開口一番聞いたスコールだったが、クラウドは「あ、いや、えーと......アンタ、本当に何でも器用にこなすんだな」と微かに赤面し眼を泳がせた。


スコールは髪を水で濡らしソフトにオールバックにし、黒のサングラス。

オレンジ系のサイケデリック模様のピタピタVネックランニングはディオ様デザインのバトルスクエア参加景品。

そしてスリムなブラックストーンウォッシュダメージジーンズ、それと雷神の部屋にあったサイファーの白のロングコートを借りてきた。

その様はまるで......金持ち有閑マダムをターゲットにするホスト、ヒモ、ジゴロ果ては男娼のような妖しい色気を醸し出していた。


スコールはかけていたサングラスをずらし頭の上に乗せ、口端で笑った。

「バトルスクエアの時とは別人だろ

「あ、うん。なんか...…俳優みたいだ」

花でも飛ばしそうな勢いで嬉しそうなクラウドと、隣で口だけ笑った形で修行僧のように目を閉じているセフィロス。

「よく言われる。"ヒモ"とか"ホスト"とか"男娼"と言われる事もある。でマズイ事とは

「あ、うん。話が少し長くなるから後人組が来たら場所を変える」

クラウドは困ったように申し訳なさそうに言い、だがやっぱり嬉しそうに少しだけ話し始めた。


「プレミアバトルにカメラが入ってたのは気が付いてたんだが、まさかそれがステージだけじゃなくてセコンド席まで入っていて、それがテレビで生放送されてるとは思わなかったんだ

俺たちの時もカメラは入ってたんだが、それは録画して出場者に記念に渡すためのだけもので出場者限定のカメラだったから...

「だから

スコールが先を求めた時サイファー達人組が控え室に入ってきた。


「よう、クラウド大変な事ってもしかして、そこの毒蛇か

さっきから散々知らねー奴らに"神羅の英雄の知り合いですか"とか、声かけ、ら.........まくっ...(間秒)...それえっっっ俺のぉおお!!!!!!!!!


スコールの着ているコートに気が付いたサイファーが飛び掛かりながら叫んだ。

「あ、そっか。どこかで見たことがあるような気がしたんだ、そのコート

暢気に納得するクラウドとは別に、スコールは突進してくるサイファーをかわしながらついでにコートも脱ぎ、投げつけた。

「変装するのに借りた相変わらずバカっぽいコート着てるんだなどこで見つけてくるんだ、こんな変なの


顔にぶっかけられた自分のコートを剥ぎ取り、投げ捨てながら「ウルセェァてめぇなんかにセンスがどーのなんざ言われたかねえ!!このクソ(黒ばっかり着てる)カラス野郎が!!!

と、サイファーが怒鳴る横で風神が落ちたコートを拾い畳み雷神に渡していた。その行動を見てスコールは一人納得した。

雷神の部屋に何故サイファーのコートがあるのか不思議だったのだ。

思えばバトルの時も、サイファーはジャケットを床に捨て、風神が拾っていた。

3人のそういう図式ができているのだろう。


どうにかしてスコールを殴ろうと追いかけるサイファーを取り押さえたのはクラウド。

「戯れるのは後だ、時間が無い行くぞ

「た、たたぁわむれるぅ~~!?

更に暴れ出しそうになったサイファーをセフィロスが一撃で沈め、クラウドは控え室一番奥にあるエレベーター「コレルプリズン」行き直行に向かった。


コレルプリズン、あの華やかなチョコボレース会場やゴールドソーサーとは見事に対照的な、荒廃し乾燥しきった砂漠。

何も無い、断続的に砂塵が吹き荒れる不毛の世界がどこまでも広がる。

強すぎる日差しに肌がジリジリと火傷のように焼かれ、眩しすぎて乾燥しすぎて眼を傷めつけられる。

熱さと砂塵で口の中は直ぐにザラザラに渇いてしまう太陽と砂だけの世界。

ゴールドソーサーの完全温度湿度を管理された世界に惑わされていたが、元来この砂漠エリアはそういう場所だ。


セフィロスの先導で、エレベーターの周囲に僅かに点在する廃墟や廃車のあたりに向かって歩き出せば、浮浪者ともヤクザ者ともギャンブラーとも見える、与太者連中がそこかしこの物陰から顔を出した。

彼らはセフィロスと顔見知りのようだが、どこか怯えた目をしていた。

しかしその連れであるクラウド達を見る目は...困惑と、獲物を見る眼をしていた。


クラウドが小声でスコールに言った。

「ここにいる奴らジャンキーや強盗ばかりだからな、気をつけろよ」

「ここは天然の刑務所。上(ゴールドソーサー)で身を持ち崩した者がここに落とされる

逃げようにも延々と続く砂漠と、動き続ける流砂とすり鉢型の地形で逃げられない。勝手に戻ってきてしまうのだ」

クラウドの後を継いで言ったセフィロスは、熱風の中を汗一つかかず涼しげに銀髪を揺らめかせ優雅に歩いている。


「ど・毒蛇さん、客ッスか

仲間達に急かされるように、一人の金髪パンク青年が車の陰から怯えながら声をかけてきた。

セフィロスの眉がピクッ、と跳ね上がったが、直ぐにいつもの無表情に戻った。

「そのようなものだ。地下室を使う。許可するまで入ってこないよう皆に言っておいてくれ」

歩調を緩めず青年を見ないまま答えた。

パンク金髪青年はガタガタと震えながら頷き、周囲にいる仲間達に表情で許しを求めた。

しかし仲間達は金髪青年に更に小声で話し掛けた。

スコールたちには聞こえなかったが、セフィロスとクラウドにはそのヒソヒソ声が聞こえていた。

歩いていたセフィロスの足がピタリと止まり、仲間に急かされている金髪パンク青年を見た。


「変更する。バーを使う」

金髪パンク青年は頷き、再び一緒にいる仲間達に表情で許しを求めた。

どうやらセフィロスとの接触役にされているらしいパンク金髪青年、役目は果たしたとばかりにそそくさと物陰に姿を消した。


ソルジャー組とは違いスコールには会話は聞こえなかったが、恐らく「地下室」には見られてはマズイ何かが置いてあるのだろう、そして、あの金髪パンクは.........

スコールは密かに舌打ちした。


「んー、今の金髪の兄さん、クラウドにアタマが似てるだもんよ

そんな珍しい髪質と色してる奴が他にもいるもんなんだなぁ」


熱砂の砂漠、何故か皆の動きがピタリと止まる。

……あえて黙っていた…皆分かっていた、けど黙っていたのだ。

「へ

アホの雷神を、サイファー、風神、スコールが視線で殺せそうなほどに睨みつけている。セフィロスはそんな会話など聞こえなかったかのように無視を決め込んでいる。


「そりゃ、どこかにはいるだろ」

クラウドがどうでもいいと右から左へ聞き流したことで、その場の凍り付いた空気が解凍された。

た、助かった……。

クラウドが鈍くて助かった…ヤベー世界には関わり合いたくない。


セフィロスが案内したのはコレルプリズンの集落の中で一番マトモに屋根と壁のある家で、一歩中に入ってみれば古臭く壊れかけてはいるもののそれなりに修復を重ね、バーとしてちゃんと機能しているようだった。

ただ、バーの床や壁の隅には生ゴミと化したジャンキー達が体ほど転がっていた。


「コイツラを外に放り出したらここにあるもの好きなだけ飲めるぞ」

セフィロスの声に、雷神が2体、風神が1体、外に放り出した。

人ともセフィロスに指示されるのは不愉快だったが、限界な喉の渇きが身体を動かした。


「アンタ、自分で"毒蛇"なんて名乗ってんのか...

サイファーが呆れたように言いながらカウンターの止まり木に腰掛けると、スコールはカウンターの板を上げ中に入り、続いてクラウドも中に入った。

セフィロスはサイファーから席を個ほど空けて止まり木に座った。


「名乗った事など無い。勝手にそう呼ばれているだけだ。他の地に行けばまた違う名前になっている」

「あっそ!クラウド俺、水氷をたくさん入れてくれ

サイファーがカウンターの中のクラウドに声をかけた。

「同水所望、渇

ジャンキーを表に放り出しカウンターに戻ってきた風神も同じくクラウドに言った。

「ワシはビールこんなに暑い時はビールを一気にゴクゴク~だもんよーっ!ピッチャーでくれ!樽でくれてもいい!だもんよー!

雷神もワクワク顔でクラウドに言った。


「で、マズイ事って何だ」カウンターの奥の食料格納庫に入って、一人で酒をチェックしつつ飲み始めているスコールが言った。

スコールは皆に振舞うためではなく自分が好きなものを好きなだけ好きなように飲むためにカウンターに入ったのであり、クラウドもきっとスコールはそうするだろうと、自分も皆の為に入った。


「スコールのプレミアムバトルがテレビで生放送されてた」

クラウドは皆のリクエストの飲み物を作り配りながら言った。

「最終戦で戦ったジェノバ統合体は35年くらい前にコイツ...」と、クラウドはセフィロスを指した。

「と、一緒にこの星を、誰も住めなくなる程に破壊しようとしていたヤツだ

この星の人達はメテオを降らせた犯人があの統合体だっていうのも、コイツが共犯者だったというのも知らない」


クラウドが自分用に作ったブラックのアイスコーヒーをセフィロスが仕草で"クレ"と伝えた。

眉間に皺を寄せたクラウドだったが、つまらない事に引っかかっている余裕は無かったので出した。

だが当のセフィロスはクラウドの作ったアイスコーヒーをまるで宝物でも手に入れたかのようにご機嫌に両手で受け取った。


「コイツはジェノバの手先になる前まではこの星の、世界中の人達から"神羅の英雄"って呼ばれてた

ソルジャーstセフィロス。子供が野球選手・バスケの選手に憧れるように男ならコイツに憧れ...皆、軍事会社神羅に夢を持って入った。俺も同じだった」

「やっぱ毒蛇の事だったのか。"神羅の英雄"確かに有名人みたいだぜ。すっげえ来る途中で喰いつかれた」

サイファーが応えた。


「当時コイツの強さ、カリスマ性はこの星を掌握するレベルで圧倒的で俺も憧れて………」

クラウドは自分用の新たな飲み物を探すフリをしてカウンターに背を向け、探すのに夢中になったフリで黙ってしまった。


話を先に進めなければ、皆に伝えなければならない、皆が情報を待っている。

分かってはいても言葉を紡ごうとする端から意識が散漫になってきて、気力が止め処なく削れていって、もうどうでもいいような気がしてきて

でも言わなきゃ、何のために満身創痍のスコールを叩き起こしてここまで連れてきたのか、説明しなければ、でも…言葉が喉で堰き止められていて、でもその堰が切れたら何もかもが選ばずに洪水のように押し寄せて来そうで、どうすべきなのか分からないけれど、分からないんだからもうどうでもいいだろ、と気持ちがぐるぐるするうち何故か涙が溢れて出てきそうで、今度はそれを塞き止めるのに必死で結局何も言えなくなってしまっていた。


「最初に私、"セフィロス"という個体は簡単に言えば、神羅が捕獲した『異星人ジェノヴァ』と人間である『化学者宝条』『化学者ルクレツィア』この体の遺伝子を合成させたジェノヴァプロジェクトの"研究結果"だ」

黙ってしまったクラウドの後を継いで話し始めたセフィロス。

クラウドと同じくセフィロスも当事者であり、クラウドによって退治された悪役であるにも関わらず、徹頭徹尾冷静で理論的で説明漏れも誇張もなく、まるでそれらを近くで傍観していたかのような口調で英雄セフィロスからジェノヴァ・セフィロスへと切り替わりやってきたことへ説明を続けた。


「黒マテリアは特殊な細工が施された古代種の神殿に厳重に保管され、一方の白マテリアは古代種の末裔の女が身に着けていた

この古代種の女はアバランチの仲間の一人だった

まず私は黒マテリアをソルジャー達に命じ手に入れようとしていたが、その私の意思を知ったアバランチメンバーがそれを阻止するために、古代種の神殿に入り込み、先に黒マテリアを手に入れた」

あまりに惨い説明が淡々と続けられる中…


「待った」

突然スコールが制止した。

「クラウドがステイタス異常を起こしている。一度話を切ってくれ」


スコールは壁を背に立って酒を飲んでいたが、それと向かい合うようにカウンター下で俯き据わっていたクラウドは真っ青になり、もう抑えられないほどガタガタと震えていた。

カウンター外側の全員からは見えなかったが、カウンター内のスコールにはその様子が見えていた。


「セフィロス。何故俺たちにそんな説明をする。過去だろ。その必要があるのか

「ソルジャーは身体能力が発達する。それは戦闘能力に限ったものではない

眼・耳・鼻、基礎能力に応じて各器官が発達する。私もクラウドもKm先のものも見えるし聴こえる

つまり、お前たち全員がこの世界に来て口にした言葉全てを我々は聴いている。

確かに私は罪深いが、お前達もなかなか黒い過去を背負っているな

知るつもりなどなかったが、知ってしまった以上はクラウドが我々の過去もちゃんと話しておくべきだと言った

だから話している。黒い過去を持つのはお互い様だとな」


セフィロス中心にサイファー達3人の空気がザッと引いた。

スコールが蹲るクラウドを見ると、まるで聴こえてくるものを拒絶するかのようにきつく目を閉じ、真っ青になって震えていた。


「一応聞いておくが…そのテログループ『アバランチ』に参加した魔晄漬けになっていた母親を殺された一般兵”っていうのは……」

スコールが視線でカウンター下のクラウドを示した。

「そうだ」

恐らく当時のセフィロスはジェノヴァの完全なコントロール下にあったのだろう。

本人は「融合」と言っているが実際はジェノヴァの「操り人形」に近かったのだろう。

そうでなければ今のセフィロスのクラウドフェチっぷりからいって、クラウドの親を殺し、村を焼き払い、本人までも刺し殺すなど考えられえない。


このバーはいつまでいられる」

「ここは無期の刑務所。期限など無い。ただ治安が悪いだけだ」

「分かった。少し待っていてくれ。クラウド、外に出るぞ」

蹲るクラウドの腕を取るとスコールは強引に引き上げた

引きずられるように本体であるクラウドも無理矢理立たされ、ふらつく足で真っ白な顔のままスコールに連行されるように人はバーから出た。


ジリジリと肌を焦がすように、攻撃的に悪意を持って照り付ける太陽。

スコールは直ぐにサングラスをかけなおした。

「アンタこういう場所でもサングラス無くても大丈夫なのかちゃんと見えてるのか

...あぁ」

そもそも色付きコンタクトしてるし、と言おうとしたがまだ精神的ダメージから立ち直れていないクラウドにはその気力が出てこなかった。


突然2人にプリズンの男が体当たりをしてきた。

たとえ"恐怖の毒蛇"の招待客であろうと、ここは無法地帯コレルプリズン。

白い顔した儚げな金髪男と男娼みたいな綺麗な男が人で出てくればヤっちまって奪いつくさなければプリズン魂が廃る

毒蛇さえいなきゃコッチのモンだとばかりに体当たりで倒れたところを…の予定だったが2人とも倒れず、気が付いたらコレル魂強盗男の方が地面とキスをしていた。


「クラウド、バー以外で休める場所は無いのか熱い!!

「太陽を遮る場所にはほぼ全部誰かがいる。どれを追い出してその場所を確保するか、だ」

「さっきの地下ってのは何故駄目なんだ

「死体があるそうだ。ここで死んだ奴は砂漠に捨てるルールだが、死んだのはここのボスのペット

砂漠に捨てたらすぐに骨になるが、流砂に飲まれて骨もどこかに消える。地下は年は使えなくなるが骨は残せる」

「そうか、俺らはボスの愛するペットがいるせいで地下が使えないのか

スコールのその妙に含みのある言い方に思わずクラウドがキョトン、とした。

「で、そのボスは今どこにいる」微かにスコールが笑い、聞いた。


「……アレ。コレルプリズンのボスは代々あのコンテナを使ってる」

スコールの質問に疑問も持たずアッサリとクラウドはボスコンテナを指した。

「分かった。あのコンテナを空けてもらおう。ボスも愛するペットの為なら貸してくれるはずだ、行くぞ

そう言うとクラウドの反応も見ずにスコールはコンテナに走り出した。

クラウドは"なんだこの当たり前のように戦闘を仕掛ける奴"と戸惑いながらも、スコールに続いて走り出した。


気持ちの整理はついていたはずだった。

スコールのリヴァイアサンのおかげで前に進めるようになったはずだった。

でも気付けば蜘蛛の巣にかかった小虫の様に雁字搦めになってしまっていた。

俺は駄目な奴だ。いつも人の足を引っ張る。

自分の前で自ら強盗へアタックをかけて行くカッコ良くて好戦的な男スコールが酷く眩しく見えた。



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