誕生11 「お久しぶり、エルオーネ」 「キスティス、どうしたの急に?大切な話って何?」 キスティスがエルオーネを呼び出した待ち合わせの場所はかつての"イデアの孤児院" エルオーネやキスティス、スコール、サイファー達が育った場所だ。 孤児院はイデアがいなくなって以来稼働しておらず交通手段も無くなっていた為、キスティスはスコールのラグナロク、エルオーネは車でやってきた。 「単刀直入に聞くけどリノアを未来に飛ばしたのはあなたね?」 「え!?リノアが失踪したってニュースで言ってたけど、未来?本当に!? リノアの市長引退は病気が原因って聞いてたけど違うの!?」 「そうね、もう少し詳しくお話ししたいところだけどその前に少しいいかしら? あなたさっきアソコ...助手席から出てきたわね? 私、一人で来てってお願いしたはずよね?」 キスティスはエルオーネが乗ってきた車を指さした。 「本当に重要な話をしに来たのよ、私 悪いけど車を改めさせてもらうわね。それとあなたのボディチェックもさせてもらうわ」 そう言うとエルオーネの返事を待たず、後ろに立っていたセフィロスに車を視線で示した。 セフィロスは黙って車に向かった。 「あ、あの人は?」 ボディチェックを始めたキスティスにエルオーネが聞いた。 「仕事の関係者。ガーデンとは関係の無い人。...あら?」 エルオーネの胸のポケットから録画中の小型カメラが出てきた。 キスティスはソレをエルオーネの目の前で無表情でプラプラと揺らせた。 一方、セフィロスが車から連れてきたのはキロスだった。 そして更に車の中もチェックし、受信機やらかけっ放しの携帯も見つかった。 何か言葉を繋ごうとするエルオーネを遮ってキスティスが美しく微笑み言った。 「いいのよ、エルオーネ。私も元々あなたを信用していなかったもの。気にしなくていいの あぁごめんなさい。あなたは元々そんな細かい事を気にするような人ではなかったわね」 そう言いながら取り上げた録画中のカメラを床に落とし踵で踏み砕いた。 それほどの事をしているのに貼りついたような美しい微笑を続けているキスティスにエルオーネは背筋が寒くなった。 「キスティ...」 言いかけたエルオーネを遮ってキスティスが言った。 「このラインはラグナさんに繋がってるのかしら?もしもし?」 キスティスは携帯に直接話しかけた。 『はいはい、ラグナです。せいか~い;』 2年前に魔女討伐の最終戦で会ったあの時のラグナの声が直接聞こえてきた。 「お久しぶりです。ガーデン副指揮官のキスティス・トゥリープです 申し訳ないのですけどとても重要なお話ですので、ふざけた事をされても困ります あ・な・た・に・は・関・係・の・な・い・事なので切りますね?」 ラグナの反応を待たずキスティスは受信機と携帯の電源を落とした。 「話し合いが終わるまで預からせて貰うわね?大丈夫よ、これは壊したりしないから」 キロスに微笑んだ。 「さて、エルオーネ。リノアが未来に飛んだのは確かな情報よ リノアが病気なのも本当。リノアね、アルテミシアになっちゃったのよね ママ先生が魔女イデアになったようにハインに乗っ取られちゃったの で、未来に飛んだ目的はスコールを殺す事だったらしいの そこで聞きたいのだけど、時間を超えられるのって世界中を探したってあなただけでしょ? あなたの協力なしでリノアがそんな事をできるわけがないわね?」 「ま、待って!ちょっとわからない!リノアがアルテミシア?どうして未来?スコールが殺されるって、どうして?」 「…うるさいわね。分からないなら分らないでいいわ。あなたが理解する必要は無い。あなたはただリノアに何を協力したのか言えばいいの どうやらあなたはリノアに協力した自覚が無いようだから、対象はリノアじゃなくても...2日前にあなたはタイムトラベルの能力を誰か、か何かに使ったんじゃないの?」 真正面から睨みつけてくる、そのあまりの迫力にエルオーネはただ怯えた。 確かにキスティスとの約束"一人で来て"を破ったし、録画も録音も秘密でしていた。 でもそれは一般人に大量の犠牲者を出したテロリストサイファー達が脱獄したことにスコールが関わっているという噂があったからだし、そのスコールの決定的なアリバイを証明した一人がキスティスだったから…… そんな疑いがある中で"大切な話がある""一人で来て"と言われればどうしても警戒してしまう。 自分は魔女イデアに人生を滅茶苦茶にされた。 イデアのせいで何もかも犠牲にして逃げ隠れ、研究モルモットにされ続ける人生だった。 サイファーはそのイデアをサポートしていた。 キスティスからの電話がありラグナに相談したところ、ラグナはどうしても仕事で抜けられなかったので、プライベートで重要な話もできる古い友人のキロスにお願いして来てもらった。 ただそれだけなのだ。他には誰にも言ってない。 ただ怖かった。2度と昔の実験材料になるだけの恐怖の日々には戻りたくなかった。それだけ。 ラグナだって守ってくれようとしただけ。 魔女の事は分からない事が多すぎて、自衛しただけだ。 昔には戻りたくない。ただそれだけ、ただ怖くてたまらなかった。 でも、キスティスを凄く怒らせてしまった…。 「ご、ごめんなさいキスティス。でも私、あのアルテミシアとの闘い以来力を使ってないの。本当よ でもお願い、教えて。何故リノアが未来に飛ぶ必要があるの? スコールを殺すってどういうこと?リノアがアルテミシアってどういうこと? お願い、約束を破ってキロスと来たりレコーダーを持ってたことは謝るわ でもスコールはラグナの子でもあって...」 「うるさい!」 それまで怒りはしていても静かに話していたのが突然怒鳴りつけられ、キロス、エルオーネ共に思わず委縮した。 キスティスは呆れたように浅く溜息を吐いた。 「誰が、誰の子ですって? 子供のスコールを身勝手に可愛がって懐いたところを身勝手に放り出し、その後スコールがどんな事になってるのか、ただの一度も興味すら持たず自分だけが大変だった? 二度と過去には戻りたくない? あなた、昔のガーデンがどんなところだったか知ってたわよね?未来も過去も何度も覗いてたんだものね? そんなところにスコール…、いえ、彼だけじゃない、孤児院の子供たちが入れられて皆無事で楽しく育ってるとでも思ってた?そうじゃないのは知ってたわよね? それとも餌が出るんだから十分だとでも思ってた?」 「キスティ…そんな…でも…」 「あら、私の言い方が悪いのかしら? 悪かったのは時代?ハインに乗っ取られた魔女イデア? あなたはいつだって被害者で私が思ってるほど身勝手じゃない? 昔いた孤児院にいた可愛い男の子 自分に懐いていつも後を追いかけて来た "私って子供に好かれちゃうの。でも私も色々大変だからそれどころじゃなかったの" だから十年以上もこの世の地獄に放り込んでおきながらステキな青年に成長した彼に恥ずかしげもなく"久しぶり"なんてお姉さんぶって声をかけれたのよね スコールがラグナの子だって知ってたけど、そんな事よりも自分の方が大変だものね? スコールに出自を教えてあげるよりも、ラグナにたった一言スコールの存在を告げるよりも自分の事が最優先 ラグナも同じ。再会後いくらでも弁解する機会はあったのにエスタの大統領様はとってもお忙しいのね 自分の息子の存在を忘れてしまうほど それとも人殺し集団のトップになった息子はいらないのかしら?汚点?戦争屋なんかと関わったら大統領様のイメージに傷がつくのかしら? ねえ、エルオーネ?16日後には私もスコールもアーヴァインもセルフィもS・T・A・R・Sに行くのよ 本物の戦争屋。命を使い捨てにする組織 そしてガーデンは普通の学校になるの。私たちがそう作り変えた 子供に武器なんて持たせちゃいけない、戦争なんて絶対に!見せちゃいけない! それがガーデンで育った私たちの総意だったのよ とっても大変だったけれど、皆で頑張って作り変えた お金もたくさん必要だった。でもね、そのお金を出したのも私達 戦争屋、人殺し集団の私たちが命を懸けて稼いだお金でガーデンを健全な学校に創り変えたの これからガーデンは子供が子供として成長してゆける学校になる。そうでなきゃいけない! その為には私たちはいくらだって犠牲になれる! 孤児であることを子供に責任を負わせちゃいけない。世間は無責任に好き勝手言うばかりで守ってなんてくれない だから私たちが子供を守る。そういう組織に作り変えた でも、私たちの記憶は変えられない 子供の頃から持たされた武器にどれほどの血と肉が染み込んでいるのか…自分が一番よく知ってる どれほどの罪を背負っているのか、どれほどの屍の上に立っているのか! 記憶は消せないのよ! だから私たちはS・T・A・R・Sに行くの。私たちにはもう、そんな道しかなかった ねえ、エルオーネ? でも!少なくともスコールだけは!そんな人生から抜け出せたんじゃないの!? あなたかラグナか、どちらかがほんの少しでも探してくれさえすれば、手を差し伸べてさえくれれば! 子供の頃でも、その途中でも!一度でも探し出してくれていたら!!守ってくれたら!! 彼だけは救えたんじゃないの!?違う未来があったんじゃないの!? ...でもあなた達は揃ってスコールを見捨てた 見事に切り捨ててくれた ねえ、あなた達、薄情者同士いっそ結婚しちゃえば?お似合いよ」 「キ、キスティス!忘れているようだが、エルオーネは君が来てくれというから忙しい中時間を割いて来てくれたのだよ?」 キスティスのあまりの辛辣な言い様に、堪らずキロスが口をはさんだ。 「ええ、そうね!レコーダーと通信までバッチリセットして、ラグナの腹心のあなたを待機させてね どんな証拠をとるつもりだったのかしら?まあ予想は付くけど? 残念ね、サイファー達の失踪についてなら私もスコールも何も知らないし関係ありませんから あなた方がどれほど追跡しても、どんな卑怯な手を使っても何も出てこないわよ。関与してないんだから! 生ぬるい場所でせいぜい猜疑心でも育ててるがいいわ! さて、エルオーネ。おなたもお忙しいでしょうけど、私にも時間が無いの つい先日分かった事なのだけど、アルテミシアの時間圧縮の時に実はスコール自身が未来でリノアに殺された…あるいは殺されたところを見ていたらしいの それは通常の空間ではなくて、どうも時空を切り離された魔空間だったらしいわ 今スコールは仕事で出ているのだけど、気が緩んだのかしら?"もう直ぐ自分は死ぬ"なんて、まるで他人事のようにこの人の知り合いに言ったそうよ」と、セフィロスを示した。 「ね、もう直ぐなの。エルオーネ モタモタしていたら時が来てしまってスコールの死が確定してしまう 過去は変えられないのでしょ? 彼ね、自分の命が無価値だって英才教育を受けて育ってるから自分の死にも興味持っていないのよ あなたやラグナのおかげよ でも私たち仲間は困るの、本当に 彼は私たちのリーダーなんだから生きてもらわないと困るの!本当に!私達仲間には彼に代われる人なんて、どこにもいないの! ねえ?エルオーネ、あなたがリノア失踪に関わっていない、知らないのならもうそれでいい でも時間が無いの。スコールが殺される時間に私とこの人を飛ばしてちょうだい でもできればこの空間事飛ばしてほしい このイデアの家はリノアとスコールの約束の場所でもあるから、もしかしたらハインに支配されたリノアもそこで何か感じてくれるかもしれない! あ、でも飛ばす時はあなたもキロスも消えてね。余計なノイズはいらないから。お願い!」 研ぎたての刃のような言葉で次々にエルオーネを斬りつけるキスティス。 あまりの酷い言い様にキロスも言い返そうとしていたが、キスティスの後ろに控えている長身銀髪のドハンサムが、息もできぬほどのプレッシャーをかけてきていた。 銀髪の男にキロスは完全に飲まれていた。 そしてエルオーネも途中からキスティスの無慈悲すぎる言葉に震え涙が止まらなくなっていた。 だがそんな弱々しい様子がまたキスティスの怒りに火をつけた。 「ねえ!時間が無いって言ってるの!分からない!? あなた昔のスコールだけじゃなく、今のスコールまで見殺しにするつもり!? スコールが殺されるのに間に合わなかったら今度は私があなたを殺すわよ! 必ず殺す!例えあなたがラグナに泣きついても!私の命を捨ててでも必ず殺す! だから早くして!エルオーネ!キロス!早くこの空間から出て行って!そして時間を飛ばして!早く!」 「......キスティス、エルオーネにできるのはタイムトラベルだけだ もし君が言うようにそこが異空間にされているのなら、できても見るだけ。干渉はできないはずだ」 「素人は黙ってなさい!エルオーネ、あなたの涙なんて何の価値も無いのよ!早く!」 エルオーネの代わりにキロスが助け船を出したが、キスティスは一言で沈めた。 「素人って、一応私も元軍人なんだがね」 困ったように言ったキロスだったが、それすらもキスティスは蹴り飛ばした。 「笑わせないで!あなた方が軍人を名乗るなんて本物の軍人が聞いたら暴動でも起こしてしまうわ 子供の頃から傭兵として育ったサイファーを一般人の法律で裁いたバカな連中が軍人だなんて、よく恥ずかしげもなく言えたものね ほんの少しでも元軍人の誇りがあるのなら、今後一切、その恥ずかしい過去は語らない方がいいわよ!」 「その辺にしておけ」 今まで黙っていたセフィロスが割って入った。 「ミッションが進んでいない。時間が無い。その女にやってもらう以外にないのだろう?」 キスティスは小さく「ごめんなさい…」とセフィロスに謝ると、腕を組みエルオーネを睨んだ。 "早く!"と、無言の催促だ。 キロスは泣き崩れているエルオーネの肩を抱き寄せ、イデアの孤児院の外に連れ出した。 2人の姿が孤児院から消えると、今まで猛毒の気焔を吐きまくっていたキスティスはその反動のように真っ暗に落ち込んだ。 「……先生、ありがとう」 今まで隣の部屋に隠れていたサイファーが出てきながらキスティスに言った。 「…随分前から私は先生じゃない」 「アンタは良い教師だった。それに優秀な傭兵だ」 キスティスはサイファーに無理矢理微笑んだ。 けれどその後は誰も何も言えず、沈黙が続いた。 「あぁ、確認するわね 第一目標はスコールを死なせない。救い出す事 第二目標はリノアを瀕死の状態まで追い込んで、セフィロスさんが前に出る ハインがセフィロスさんに移動するためリノアから出たところを殺すか捕らえる。OK?」 「そう。最悪毒蛇に入ってもかまわん。元々コイツも世界征服を目論むようなキチガイだからな ただリノアは昔とは比べ物にならないくらいに強くなっているから先生は絶対にこの空間から出ないでくれ 万が一にでも見つかったら新たな悲劇がスタートしちまう」 「分かった。でもハインがうまいことセフィロスさんに入ってくれるかしら あなたに入ったらそれはそれでマズイわよ」 「いや、多分大丈夫だろ。なんかコイツあのアデルと雰囲気似てねーか?」 サイファーに言われキスティスが改めてセフィロスをジッ…と見つめ… 「似てる…」 「なっ?」 何故かサイファーとキスティスは互いに複雑な笑いをした。 「でもよ、スコールは俺と真逆を考えたんだぜ? ハインにはクラウドは美味しい餌になるだろうから、力はあってもアイツは関わらせるなって アイツ、リノアと付き合って結構成長したと思ったが、ヤッパ鈍いぜ!アホだ ハインに乗っ取られなくてもスコールが死んじまえばクラウドがダメになる。そういうのが全然分かんねーんだ、アイツは」 サイファーの話にキスティスが首を傾けた。 「あの二人、そんなに仲良しだった? クラウドさんがガーデンに来た時は凄い喧嘩してたわよ?あの2人 それでスコールに怒ったクラウドさんが訓練所を全壊させちゃったの 原因は知らないけど。後で仲直りしてたけど」 「クラウドは訓練所全壊くらい"へ"でもねぇよ。それこそ魔法1回で全壊ヨユー あんな『悩める美少年』なツラしてるが戦闘レベルはバケモノ級だぜ? そん時ぁ何かで喧嘩したのかもしれねぇが、今は相当…入っちまってる」 途中、言葉を切ったところでサイファーは自分の心臓の辺りをトントンと、指した。 「スコールを助けないとクラウドがヤベー…ってことは俺がヤベー 住むトコ無くなっちまう」 わざと道化て言うサイファーにキスティスは苦笑いをした。 「始まったようだな」 空間がグラグラと歪んでいる。 始まりは小さく、それが段々と大きく歪み、平面だった壁がグラグラとした歪みが渦を巻くように大きくうねり始め…その渦に空間事吸い込まれていった。 一瞬世界がホワイトアウトし、大きな歪みの渦が小さな歪みに戻り、平面になってゆき......止まった。 キスティス・サイファー・セフィロスのいるイデアの孤児院は、世界から切り離されていた。 そして切り離されているのはワープした先の空間も同じようで、目に見えているものが現実ではなかった。 果てしなくどこまでも続く罅割れた荒野、シンナーの中にペンキを落としたかのようなカオスな空が魔空間であることを証明している。 「あ!!スコール!!」 魔空間の向こうからフラフラになって歩いてくる男。 もう駄目なのは一目で分かった。 酷い怪我、彼が歩いて来た場所には身体から流れ続ける血の道ができている。 一定のリズムで血がバッバッと噴き出している。 戦闘不能ではない、これは確実に命を落とす…これはもう止められない。 「スコール!!スコール!!」 キスティス、サイファーがそこに行こうとするが、魔空間との間に何故か目に見えない壁があってどうしてもスコールのいる罅割れた大地に降りられない。 次々と思いつく限りの次元・時空魔法を発射してみても、ガンブレードを振り回し切り込もうとしても目に見えない壁はびくともしない。 死なないで、お願い、死なないで!死ぬなんて絶対に許さない!スコールが死んでしまう! 目に見えない壁のせいで叫び声すらも届かない。 スコールに届かない! 「スコール!てめぇ!!リノアを置いて行くのか!!許さねぇぞ!てめぇ!スコール!!!」 必死に気付かせようと叫ぶサイファーの声も、言葉は責めて怒っているが伝わるのは、悲鳴。 死なないでくれ、逝かないでくれ、死ぬな!こんなのは違う!止めてくれ! 足元がおぼつかなくなっているスコールが何かを探している。 何かを呟いている。 .."リノア"...口が言っている。 絶命を目前にしてスコールがリノアを探している。 そうだ、これからリノアが来ることを彼は知っているのだ。 サイファーが叫ぶ。 「スコール!てめぇは魔女の騎士だろ!リノアを遺して逝くな!!スコール!逝くな!!根性見せろぉ!俺らぁしぶといだろぉ!殺したって死なねぇ!死んでなんかやらねぇ!!証明しろぉ!!今、証明しろぉ!!」 サイファーの願いも次元の壁に阻まれ届かない。 "リノア!"そう叫んだスコールの口から血が溢れてきた。 スコールの歩みが止まった。 膝をつき、地に倒れた。 「スコール!!まだだ!スコール!!スコール!!戻ってこい!!まだだめだ!だめだ! お前の役目はまだ終わってねえ!!スコール!!いくなあぁ!!!」 その場所に血だまりが広がってゆく。 「お前たち、下がっていろ」 セフィロスが正宗を鞘から抜き、空高く掲げる。 青ざめたサイファーと、涙で化粧が完全に落ちてしまっているキスティスが後ろに下がった。 セフィロスは時が満ちるのを待っていた。 それはスコール・レオンハートの死。 クラウドがどれほど動揺しようとも、自分が付いているから大丈夫。 サイファーから計画を聞かされた時、同時に可愛げのない鬱陶しい小僧排除の計画が閃いた。 ザマアミロ。 これで輝ける英雄は死んだ。消え去る。 俺は殺していない。こいつらは救えなかった。 英雄の屍を回収してやる。クラウドのために。 「デスペル!」 魔力が正宗に集中していく。 キィン!キュイン!キン!と音をさせながら正宗が刃の輝きではない光を集めていく。 「リノア!!」 リノアが彼方から泣きながら走って来た。 その口からは"スコール!""スコール!"と連呼しているのが読める。 見つけ辿り着いたそこには……………息絶えたスコール。 セフィロスが正宗を振り下ろした。 ピシッ…! 目に見えない壁に薄く亀裂が入った。 「スコール!!」 リノアの悲鳴が亀裂の入った隙間から聞こえてきた。 |