誕生13  



ゴブリンアイランド近くの海上に浮かぶ、大破した飛空艇。

クラウドのいる場所は、携帯やバングルに仕込んである発信機を使わずとも数十キロ先からでも分かった。

そこで大きな事件があったことを示すように、空に異変が起きていたからだ。

セフィロスが駆け付けた時には、クラウドは甲板部分にずぶ濡れのまま茫然自失状態でへたり込んでいた。

その焦点の合っていない視線の先には、持ち主を失ったガンブレード・ライオンハート。

見えているのかいないのか、ただそれだけに視線を向けているクラウドは気づいていない。

飛空艇の遥か上空に無数の召喚獣たちが次々と現れ集い、互いのエネルギーで支え合うように魔空間の円陣を組んでいっている。

今も一体、また一体と集い召喚獣円陣の層が厚くなってゆき、魔空間は濃度を上限無く増してゆき、普段は何もないただの海沖が今や身震いするほどの荘厳な魔空間となりつつある。


セフィロスの本能がうるさく警笛を鳴らしていた。ここは人類の居ていい場所ではない。

「クラウド!!

おそらくこれからここで何かが起こる。ここにいては巻き込まれる。


「クラウド、しっかりしろ

なんとかクラウドを正気に戻し召喚獣達の魔空間から出そうとしたが、ライオンハートをみつめたまま、まるで置物にでもなったかのように一切の反応をしない。抱えて連れていくにしても、空に浮かんでいる召喚獣たちの中にはクラウドの召喚獣もいる。

クラウドは戦闘ばかりでなく他の用途でも使うせいか召喚獣達の成長は早く、どういうわけか臨界点を超えても分裂もせずに単体成長し続けている召喚獣もいる。そしてそれら召喚獣達は妙にクラウドになついて、指示を出すのが下手なクラウドに代わり、勝手に動いたりもしている。

だからこそセフィロスは、クラウドの召喚獣達が信用ならなかった。

今ここで強引にクラウドを抱いて魔空間から抜け出せば、後で保護者気どりの召喚獣らに何を告げ口されるか分かったものではない。

復活以来どうやっても嫌われ度が限界突破で増し続けてはいるが、別に積極的に嫌われたいわけではない。できることなら1%でもいいから好かれたい。

保護者気どりの奴らがあの上空で円陣に混ざっているのだ、クラウドにここに居させたいのだろう。

だが自分の本能はここにいては危険だと警笛を鳴らしている。

なんとかしてここから避難させたい!


「クラウド!」

軽く肩を揺らすと瞳から雫がパタパタ…と落ちた。

大きな目を開きっぱなしにしているせいで生理的に出ているようだったが、あまりに透明で美しい水滴。(…舐めたい)

「クラウド!しっかりしろ!目を覚ませ

本音を召喚獣達に読まれぬよう、クラウドの意識を回復させることに集中していますアピールをするが、また瞳から水滴がパタパタパタ...と落ち…(美味しそうだ舐めたい腹が減った喉が渇いた…ここに美味そうな水分が…)

僅かな隙をついて本能が反応してしまう。

「クラウド!」

召喚獣達の目を気にして必死にダダ洩れの本音を隠すセフィロスだったが、彼らは物理的な『目』で対象を見ているわけではない。それぞれに捉え方は違ってはいても、セフィロスが今必死で自制心をフル稼働している心の修羅場は、ほぼ殆どの召喚獣達に伝わっていた。


そんな状況下、陽の光を受け澄み切って輝くスコールのライオンハート。


そこへ視線を送り続けるクラウド。


潮風がサラリ、サラリと通り過ぎ、クラウドの視界を糸のような何かが幾度となく通り過ぎる。


ライオンハートに固定されたままのクラウドの瞳は閉じられることなく、ポタポタと滴が流れ落ちる。

セフィロスは堪らず手で覆い瞼を閉じさせ、視線の先からライオンハートを消した。

そして微かに震えている身体を抑えるように強く抱き締めた。(決して邪な気持ちではない)


だがその為に瞳を覆っていた手が外れた。

眩い世界から突然の暗転、再び眩い世界へ視界が開いたクラウドの目に映ったのは、白いシャツと銀色に透ける髪。


風に靡く幾筋もの銀の糸。


クラウドの意識が覚醒し始めた。



…糸………ではない……………髪…………


長い…銀…………………


一気に現実に戻ったクラウドはゾワッと鳥肌が立て、物凄い勢いでセフィロスを突き飛ばし、後ずさった。


「ななな、なに、何だおまえ!!!!わ、わわわ!!


クラウドが完全に覚醒し、セフィロスは腕の中からの喪失に微かに悲しく笑った。


「な、ななんでここにいる仕事は!!

邪悪に微笑むセフィロスにクラウドは怯えながら聞いた。

「仕事は終わった。失敗したがな」

ライオンハートを示した。

「コイツの世界で元お前の仲間の赤マントに会ってきた」

「……赤…ヴィンセント

「そんな名前だったか…。ガーデンとやらも(外側から)見たし、金髪の鞭女にも他数名にも会った

お前がこっちで何があったのか教えてくれるのなら私の方も何故あっちの世界に行ったのか、何があったのか教えてやる」


クラウドは葛藤した。

セフィロスと取引など何であれ危険だ。こいつの言葉には必ず裏がある。絶対に何か含みがある。嫌な予感しかしない。その証拠にセフィロスは邪悪に笑っている。

本能の警戒レベル10だったが、それ以上にスコールの世界に行っていたことがどうしても気になった。


さっきまで楽しくスコールとのバカンスを満喫していた。

なのに今こんなことになっている。

今、この状況が自分で理解できない。

スコールがいない。

ついさっきまではいた。

スコールが大切にしていたライオンハートが目の前にある。

分からない。

この状況が理解できない。

スコールは

どこに行った


「………アイシクルエリアで風神雷神を休憩させてる時、スコールが一人で大雪原に行こうとした

俺、連れ戻した

アイツ、この世界に来てからマトモに休めてない。大雪原で体力維持できない

雪原に行きたかったら先に体力を戻せって言ったけど、アイツ全然休もうとしない

だから俺、風神と雷神を麓の酒場に残してスコールを飛空艇に無理矢理乗せて発進させた

そしたらアイツ……見送る風神と雷神に………『じゃあな、お先に!』……って……………笑って………

俺、…分からなくて……

…………飛空艇を大空洞に向けて自動操縦に切り替えてる時………

急に空気が変わった

甲板にいたスコールのところに走って行ったら……スコールの前に、凄い…桁違いの…空気も色も歪める魔力を放出してる女がいた

スコールは"リノア"って言った。その女、バラバラ姿が変わった

『黒いドレスの女』『グレーの服の女』『赤いドレスの女』『青い服の女』あと『ドラッグクィーンみたいな男』とバラバラ姿が変わった

赤いドレスの女がスコールを見て凄く嫌な笑い方……お前みたいな笑い方をした」

「………………………」


セフィロスは意識してクラウドの話に口を挟まずにいたが、実は秘かに、カナリのショックを受けていた。

恐らくサイファーが似てると言っていた『アデル』が『ドラァグクイーンみたいな男』なのだろう。何故なら他全部が女なのだから。他にいない。そのドラッグクィーンに似てると鞭女も言っていた。

そしてクラウドは『ドラァグクィーンみたいな男』を「お前みたいな」と、『凄く嫌な笑い方』を『お前みたいな笑い方』とわざわざ言い直した。

カナリのダメージを受けたが、今はそれどころじゃない、今ピンチなのは俺ではなくクラウドだと自分に言い聞かせた。

……だが、ショックだった。


「誰だ、どこから現れたって俺が言ったら…スコールが振り向いて、俺に向かってきて、俺を……甲板から外に投げ落とした

"戻って来るな"って

……………俺は、何が何だか分からなくて、レビテトかけて戻ろうかとか、羽を出して戻ろうかとか迷って、でもスコールは戻ってくるなって言った…

どうしようか迷ってるうちに下は海で、雲の上から落ちたから凄く深く潜って…それで…浮かんでくる途中で飛空艇のパーツがボトボト落ちてきた

浮かんでた飛空艇にはスコールがいなくて、女もいなくて………

だから……スコールは…………スコールは

クラウドの震えがまた酷くなり始める。


もう、分かっているらしい。

だがそれを認められないでいる。


「ヴィンセントがスコールと俺は長い付き合いになるって言ってた

だからアイツは簡単には死なない!

年喰って死んでいくにしても、きっと凄く長生きするんだ!

アイツは変な奴だから!!!だから……

「死んだぞ。アイツは

私はそれを見てきた

奴は自分の死が近いのも、『リノア』に殺されるのも知っていた

だからそれが来た時、誰も巻き込まないよう一人になろうとした

随分たくさんの召喚獣達に………」

別れを言われていたらしい、とサイファーから聞いた話を言おうとしたところでセフィロスは気が付いた。


この、現状。


人間などいくらでも毎時毎秒ゴロゴロ死にまくっている。

別に珍しくも無いし、それに対し召喚獣がどうこうしたなどという話も聞いた事が無い。

だがアイツが死ぬ時は召喚獣達がわざわざ挨拶に来たという。

どういうことだ。

今、この無数の召喚獣達。

何故円陣を組んでいる。

何故…


召喚獣たちと普通に会話ができたスコール・レオンハート。

奴は死んだ。

何故召喚獣達がここに集っている。


……………待っている…?

何を…?


セフィロスは無言でクラウドに遥か上空に無数にいる召喚獣達を指した。

初めて召喚獣達の存在に気が付き驚くクラウド。


毎秒毎にどんどん増えている召喚獣たちの輪。

見たことも無い数・種類の召喚獣達が、今では大空を覆い尽くさんばかりに飛空艇……ではない、海中の何かを囲み待っている。


クラウドは自分の召喚獣達、そしてスコールの召喚獣達もその無数の円陣の中にいるのに気がついた。


スコールのケツァクウァトル……やっぱりカッコイイ…あのタバコ1本分のセイレーンもいる。カーバンクル可愛い。あ、トンベリがスコールに作ってもらった超巨大ほうちょうを振って挨拶してくれてる…。やめた方がいいぞ周りの召喚獣たちがビックリしてる。でもご機嫌は直ったみたいだな、良かった。船で見た輝く剣のクリュサオルという召喚獣もいる。


そして気が付いた。…スコールのシヴァがいない。


『クラウド』


声のした方をクラウドが見ると、そこにはスコールの召喚獣リヴァイアサンが上空の集団から降りてきていた…が…。

「随分レベルアップしたな」

会ったのはほんのか月くらい前なのに、その時とは明らかに見た目がバージョンアップしているというか、重鎮さや華美さが増していた。やっぱりこのリヴァイアサンは華麗な成長をするんだな。

『お前たち人間とは時の流れが違う。お前には少しの時でも私は悠久の時を渡ってきた

そしてスコールも、輪廻転生原点回帰により本来の姿に戻り我々の元に還って来る』

「え…」

召喚獣リヴァイアサンから慶びが伝わってくる。

『陸地に出てウォールをかけろ。剣を深く地に突き立てろ』

「…え

『我々はエネルギー体だが、お前は質量を伴っている。早くしないと間に合わぬ


「ウォール

クラウドはとにかく言われた通り陸に上がって自分にかけたが、どういう事かまるで状況も意味も分からなかった。

何かが始まるのは何となく分かった。

前代未聞無数に集まっている召喚獣たち。


突如、空気が変わった。

肌で感じた。

ここだけではない、世界全体、次元全体が別物になった感覚がした。

何かが起こる!

反射的にスコールのライオンハートを無くさないよう帯剣し、自分のアルテマウエポンを地に突き刺し支えにした。


『時は満つ


召喚獣たちが一斉に空気を震わせ何かを謳い始めた。


声に出して歌っているのではない、召喚獣達が個々に波動を発して呪文にし、それが無数の召喚獣全体に共鳴し鎖の様に繋がり、大きく空気を震わせる巨大で強靭な波動になっている。


言葉でもないし声にも出していないのに、何故かその巨大で強靭な呪文が何を謳っているのか意味が伝わってくる。


今まで雲一つない晴天だった空に分厚い積乱雲が次々と発生しどんどん暗くなってゆき、やがて夜の様に真っ暗になり、更に闇深くなり、異常に近い雷が積乱雲の中でバリバリバキバキと盛んに鳴り始めた。


『氷晶の君』


海が波打ち始め、大きな津波へと変化していく。


稲妻が何本も同時発生落雷し、激しく強過ぎる光の点滅が世界から色彩を失くし、ただ白と黒、光と闇に二極化されてゆく。波立ち荒ぶる海面、耳を劈くほどに鳴り響く雷鳴の中でも召喚獣達の呪文の波動が聞こえてくる。


『昏き世を抜き目覚めし現』


轟く雷鳴、地響きの中、高低差10mはある津波が次第に渦巻きはじめ、渦巻きが更に大きく深く早くなっていき、強烈な速さと深さの渦巻きから飛沫が飛び散るが、その飛沫の勢いがありすぎてまるでライフル弾の連射ようにクラウドのウォールに強烈な衝撃を与え続け受け揺れている。

これでは長く持たない。早めにウォールの重ね掛けをしなければ危ない。

未だかつて経験した事の無い惑星規模の雷鳴に落雷にクラウドは恐怖、畏怖を感じ始めていた。


『悠久の旅路共に往かん』


アルテマウエポンを地に突き刺していなければ瞬く間に吹き飛ばされてしまう強風と、どんどん規模を増しつつある巨大渦巻きはまるで召喚獣の唱に乗るように大口を開け始めている。

空気を捩じり引き裂くような稲妻をウォールを重ねても防ぎきれずにその身に受け、連続してくる衝撃波に息を切らし始めていた。


『我らが褥』


渦巻きは更に速度、深さを増してゆき、中心の空洞部分が恐ろしく深くなった証拠にゴォォという音だったのが、より深くガオォーンと海中で響いている。

中心の空洞部分がどんどんどんどん大きく深くなってゆき、海の沖の底が見えそうな巨大な渦が大きく出来上がっている。もう渦の穴の直系は恐らくkmを超えている。

召喚獣達の声にしない波動の呪文、色彩を失くした光と闇の閃光の世界、体の芯まで響く空気を引き裂く雷鳴、地響き、ウォールが直ぐに破られてしまうライフル弾連射と化した水飛沫に恐怖に震える。



『出でよ!我らが礎!』


何かが渦の真ん中にいるような気がした。……いや、いる。

だからこそ召喚獣達が囲んでいるのだ。

召喚獣たちは待っている。

待っている。

巨大渦の中心から水柱竜巻が昇り始めた。

水竜巻はどんどんどんどん空高く昇ってゆき分厚い積乱雲を巻き込み突き抜け、上るにしたがって竜巻の柱は太くなってゆき、どんどん巨大渦の直系に近くなってゆき、最後には巨大渦は竜巻に吸収され姿を消し、、、遥か下の海の底が見えた。


時が止まった。





   『誕生




   『誕生




   『誕生




召喚獣たちの一斉の繰り返しの呪文が空気を波状に震わせ、何かを促し刺激している。

スコールの気配がする。


…………ギュオォォーーーン!!!と、時が止まり回転が止まった巨大な水柱の中を何か…見えない何か大きなものが突き抜けていった。

次の瞬間、空気が圧縮され、地面に押し付けられるような重圧を感じ、その一瞬後に滅茶苦茶に大量の水、ではなく巨大竜巻で吸い上げられた海水が一気に、空気事潰すような圧力でギャンッッッ!!と一気に落ちてきた。

ウォールをダブル掛けしていて更にクラウドだからこの圧力に耐えられたが、そうでなければ水圧で圧死していた。

それでも一瞬意識が飛んだクラウドはハッと気が付き上空を見上げると…先ほどまでの熱い積乱雲の大群が嘘のように…雲一つない快晴の空にハッキリと色彩が色にグラデションされた濃い虹が大きく空にかかっており、更にその遥か上空に……………すごくキレイな何か…


空に透けて輝く…形になっていないもの。


完全な透明だけど快晴の空が様々な形に屈折してそこに形あるものがいるのが分かる。


その形は少しフェニックスに似ている…………似てないな…


すごくすごく大きな翼…翼の刃…羽ような形をしたもの枚が水晶の刃のようで、それ枚が飛空艇よりも大きい。


透明で大きくて美しくて荘厳な翼を広げ、長い長い遥か彼方まで届く程の輝く尾。


あまりにもきれいで……問答無用にカッコよくて…理屈抜きで納得した。


あれはスコールだ。


召喚獣達がその誕生を祝福するように、一斉にその透明な翼ある者、スコールに向かって光の束を放った。

眩い光の洪水を全身に受け、太陽よりも眩しく隅々まで強く輝き満ち、輝きが落ち着いた時にはそれまで無かった、クラウドには読み取れない呪文のような模様が体に浮かんでいた。

その大きな大きな透明な存在は、翼を度天をも突き抜けるほど大きくはためかせると、あっという間に遥か上空大気圏を突破して飛立っていった。

召喚獣達はその透明な存在の翼の刃枚にそれぞれ入り、共に消えていた。



ただ1人、残されたクラウド。

あれはスコールだ…スコール…死んでなかった…。

ただ嬉しかった。


死んだから姿も生命体も変わったのだという理屈はクラウドの中には無い。


『彼はこれからどんどん成長してゆく。

お前たちの世界の言い方をしたら、今のスコールは誕生したばかり。レベルだ』


クラウドは傍らにいたリヴァイアサンを見た。


『全ては不定調和。どうなろうとも、彼がこうなることは最初から決まっていた

召喚獣達はみんな知っていた。そして待っていた

彼がハインを倒し、我々のホームになるのを』


ハインを倒す


『神を殺す神

無限のハインの終焉とそれに伴う放出、新たに構成される無限、彼は誕生し、ハインを殺しに行った』

「ま、待っ…あ、お、俺も行くスコール戦いに行ったんだろ俺も


『血と肉を持った身では時空は超えられぬ

だが彼の勝利は元より決まっている。憂う必要はない

そして今、お前が召喚すればスコールと共にハインと戦いに去って行ったお前の召喚獣も直ぐに戻って来る

ハインとの闘いがどうだったか聞けばいい』

「え、今行ったのにもう終わってるのか

『お前たちの時間と我々の時の在り方は違う

仲間の契約をしたお前が呼べばスコールは来る、、、ことになっている。……来ない時もあるかもしれないが、、、、、来てもしらばっくれて通り過ぎるし怒らせると逆にお前を攻撃してくる…時もあるかもしれないが……いや、そうではなくて、本当のピンチの時は来る…時もあるし、、いや、そうではなく!今飛立ったスコールが今戻ってきても、もうお前が今見た姿ではなくなっている、、と、言いたかったのだそう

新しい命で随分経験も積んでレベルもかなり上がっている

だが見た目がどれほど変わろうともあの性格は変わらない。そこだけは覚悟をしておけ!スコールはスコールだ!

リヴァイアサンは嬉しそうだ。


「お前はスコールと一緒に行かないのか

『勿論闘いに立ち会う。ハインの終焉は召喚獣達にとっても大きなターニングポイントだからな

だが一言に召喚獣と言っても私とスコール、他の召喚獣達もそれぞれに存在する時空も生命体も其々に違う

私の場合…あぁ、私とディアボロスの時空の捉えは少し似ているな、そういえば』

「え

『留まらず更新され続ける本が無限に置いてある図書館

いつ、どの本を手に取り、読むか読まないか、その世界に入り込むか関わるか、生命を献上するか、全ては我らの任意

スコールがハインを喰い殺すシーンはたった今ページに書き加えられた

だがそうなる事は我々神の欠片は最初から知っていた...

いつ、そのシーンに入り込むかは自由。そんなところだ』

......喰い殺す」

『それも人間の持つ意味とは違う。ハインの能力をスコールが取り上げる...ハインの存在をスコールが抹殺し、その上にスコールが坐す

スコールには自覚は無かったが彼は元々人間ではなかったからな。...というか、人間と召喚神が融合していた

彼は存在自体がつの宇宙空間。彼のレベルに応じて宇宙が拡大していく

この世界やサイファーたちのいた世界が人間が住みやすい世界であるように、スコールの創る世界は召喚獣達にとって居心地のいい世界となる

我々はそれぞれが個々であり協調性などカケラも無いが、我々の『HOME』...彼が覚醒するのを皆が待っていた

永く

スコール・召喚神覚醒の時、お前には極一部の召喚獣しか見えていなかったろうが、あの時実際には1000万体を超える召喚獣達が誕生を祝いにやって来ていた

全ては不定調和。この時を召喚獣達はずっと待っていた』


...スコールはもう元の姿には戻らないのか

フワリ…とリヴァイアサンが浮き上がった。


『では、私もそろそろ行く

やはりスコール最新刊、しかも転生の書は気になる

クラウド、変化を恐れるな

お前とスコールは共に並ぶ仲間

そしてお前と契約している召喚獣はスコールの召喚獣であり、スコールと契約している召喚獣はお前の召喚獣でもある

契約を交わしたあの時、お前はそれほど深くは考えていなかったろうが、その契約はとても重い

そこに全ての答えがある

では、用があれば私も呼ぶがいい、及ぶ限りの力になる


リヴァイアサンの姿は消えていた。


後には何事も無かったかのように凪いだ海と、爆風に飛ばされたセフィロスが岩の近くで気絶して…いや、死んでいる。

セフィロスの奴、なんだかんだ言いながらライフストリームの常連だな…。

実はもう古代種と友達になってたり……いや、それはない。「アイツ、また来やがった。とっとと追い返せ」とか言われてんだろうな…と、クラウドはどうでもいい事のように思った。


スカッと晴れ渡った空を見上げた。


3重の大きな虹がクッキリと大空の端から端までかかっている。


さっきまでの轟きわたる轟音と天地がひっくり返されるような地響き、空気が引き裂かれているかのような雷鳴、光と影だけの稲妻の閃光の世界が嘘のようだ。


変化を恐れるな。


変化を恐れない。


今度スコールに会ったら言ってやる。


「なんだよ、お前だって人外だったんじゃないか


笑って言える。


生き方は一つじゃない。命の形も一つじゃない。


またヴィンセントにも会いに行こう。


「つまりそういう事だ」って、きっとヴィンセントは微笑む。






誕生:完

誕生12     NOVEL

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