神羅時代はオリキャラ×クラウド。

捏造ストーリーが特濃です。自己責任で読んでください。


喪失の向こう側1編集中


「はじめまして、僕はアレックス・ジャーヴィス

ミッドガル番街出身だ。半年間よろしく

真っすぐに差し出された手、田舎育ちのクラウドにはこんな挨拶の仕方すらも都会を感じ、これからの神羅生活にわくわくした。

「俺はクラウド・ストライフ。ニブルヘイム出身。よろしく

「ニブルヘイムってどの辺そのルックスは北の方の人種だよね


訓練兵寮で同室になった小さな可愛い男の子に、アレックス・ジャーヴィスは興味を持った。

晴れ渡り抜けるような青空の瞳と、眩く輝く金色の髪、握手する手は子供の様に小さく、雪の様に柔らかで真っ白だ。

神羅受験資格は13歳からだが、目の前にいる子はどう見ても自分と同じ年には見えない、見たとこせいぜい歳前後。

よくこんな幼く可愛い子が試験に合格できたな…と感心し、当分は自分が守る立場になるんだろうか?と予感がした。


「北じゃないしニブルエリアの田舎としか言えない

でも村には神羅の屋敷があって研究する人みたいなのが良く来てた

それと近くのニブル山に魔晄炉があって、そっちには神羅兵が来てた」

「え!!じゃあもしかして英雄セフィロスに会ったことある!?あんの!?

「ない」

「んー、そーだよね。世界の英雄にはそう簡単には会えないよね…」

ガックリと肩を落としたジャーヴィス。しかしすぐに立ち直り、再び夢いっぱいの笑顔になった。

「でもさボクん家、実はミッドガルでホテルやってるんだけどさ

ウチのレストランに英雄セフィロスが来たことならあるよ

そん時僕は学校に行ってたから見れなかったんだけどさー

カイショクとかいうのだったらしい父さんが言ってたけど、やっぱり英雄はオーラが凄かったって!!

サインお願いしようと思って用意してたけど全然そんな事言える雰囲気じゃなかったって!

僕のお父さん結構何でも強引にやっちゃう人なんだけどさ、英雄セフィロスには通じなかったみたい!オーラ、半端なかったってー!!

「へー」

「君も英雄セフィロスに憧れて神羅に

「うん」


絶望的に言葉が足りていないクラウドは、大抵の人と会話が続かない。

更に可愛らしいルックスとは正反対の、”男らしさ”に拘る性格も相まってニブルヘイムでは一人の友達もできなかった。

田舎は意外にコミュニケーション能力が必須なのだ。

だが神羅で同室となったアレックス・ジャーヴィスは偶然にもそんな無口で偏屈で不愛想で田舎者の美少年とは正反対の性格、コミュニケーション能力が高く、素直で優しく、友人が多い。

「だよねえねえ、君はいつ英雄セフィロスのファンになったの!?

ちなみに僕には5つ上の兄さんがいるんだけど、兄さんが中学年の時に学校に神羅が就職案内でパンフレットとか資料とかたくさん置いて行ったんだ

兄さんは神羅に入るつもりだったからね!その就職案内一式を持って帰って来て、僕にも見せてくれた

英雄の写真やプロフィールが載っててさぁそりゃもーもーカッコ良くてさあ!!俺はソルジャーになる!!その時に決めたね

そん時のパンフレットは今も実家の僕の宝箱にしまってあるんだできるだけ触らないようにしてる汚れたり皺になったりすると嫌だからね

でも結局兄さんは、長男だからって神羅入りは両親が許してくれなかった。で、高校に行って今は大学に行ってる

だから僕、兄さんにも応援されちゃってるんだ"絶対にソルジャーになれ"って

ジャーヴィスの夢が彼一人のものでないのは、同じ様に母に応援されて故郷を出てきたクラウドにも良く分かった。

「うん」

「君は!?

「君はどうやって英雄を知ったの

「テレビ。魔晄のCM

「あ!!あれか!!英雄が魔晄炉を守るためにモンスターと戦ってるやつだろ!?

あれ、滅茶苦茶カッコイイよね!!最高だよね!!あれこそ英雄だよね!!

「うん」

「うんうん僕も僕もあのCM滅茶苦茶最高!!たまんないよねえ!!英雄セフィロス最高

ねえねえ!あのCMマネやろうよ!どっちが似てるか!僕けっこう上手いんだよ!僕からやるから!見て見て!!


アレックス・ジャーヴィス13歳。

クラウドに初めてできた友達だった。



どこまでもどこまでも永遠に続く激痛の嵐

血も肉も骨も関節も内臓も目玉も舌も耳も脳みそも

有るもの全てがギスギスに切刻まれ叩きつけられ引き千切られすり潰され

気が狂う

ジェノヴァが復活しようとする

もう止めてくれ再生なんかするな

新たな苦痛が始まるだけだ

新たな死が始まる

こんな所に来るんじゃなかった

いつだって俺の選択は間違ってる

なんて馬鹿なんだなんで俺はこんなにも馬鹿なんだ

この選択が正解だったのならこんな苦しみは許されるものじゃない

耐えられない

殺してくれもう殺せ

お願いだジェノヴァ復活しないでくれ

俺の選択は間違いだった

馬鹿だ取り返しのつかない間違いを犯してしまった



「クラウド、また喧嘩したんだって

「………」

「ねえ、君が怒るのも無理はないとは僕も思うよ

でも、だからってこんなにそこらじゅうで喧嘩してたんじゃ君の評価が下がるだけだよ

結局君が損をしてるんだよ分かってるんだろ

この1カ月だけで何人の教官に怒られたんだよ

ホント、ちょっとは自分の立場を考えろよ」


日のノルマがほぼ終わり、仲間同士で語り合いながら過ごす自由な夕食時間。

この時ジャーヴィスは出席していた委員会が長引いて、まだ食堂に行けずにいた。

そのジャーヴィスを慌てて呼びに来たクラスメイト。

「アレックス来てくれ!ストライフがまたやってる!直ぐ来てくれ!」

案内されるまま向かったところ、クラウドが食堂で同期と殴り合いの喧嘩をし、相手の戦意喪失を勝ち取ったところだった。

「クラウド!」

アレックスに気づいたクラウドは気まずげに目を逸らし、周囲の声も全無視して、走って食堂を出て行ってしまった。

そのクラウドを追いかけようとしたジャーヴィスだったが、途中で担当のメイヒュー教官に呼び止められた。


「あのさ、僕、ここに戻る途中でメイヒュー教官に会ったんだ

教官も君が喧嘩してるって呼ばれてきたんだって。でも君は食堂を出た後だった

伝言預かったよ。

『揶揄われたから、罵倒されたから、気に入らないから、殴る。それでは獣と変わりない

兵士でありたいのなら、暴力は仕事のみに使う事

それができないのであれば神羅にいる資格はない。神羅は軍事会社、人間の組織だ

次に暴力事件を起こした時は親に連絡をする』

………クラウド、もう後がないよ

つまんない事で引っ掛けられんなよ!損をしてるのは君なんだよ!いっつも!」

ジャーヴィスの厳しい言葉にクラウドが机をバンッと勢いよく叩いた。

「じゃあお前は"おちびちゃん"だの"お嬢さん"だの馬鹿にされて!言うだけじゃない!モノ取られたり隠されたり突き飛ばされたり!ベタベタ触られて!アイツラはいいのかよ!何で俺が悪いって言う!アイツラの方が悪いだろ!」

「分かってる!分かってるよ、そんな連中に絡まれて君が悔しいのは!そんなの皆、メイヒュー教官だって分かってて言ってるんだよ!

皆が言いたいのは、安易に暴力を使うなって事!

授業でも習ったろ!暴力は使いどころを間違ったら自分に返って来るって!

今回たまたま喧嘩に勝ったって、次勝てるとは限らないだろ!

また喧嘩して負けた時、君、どうなるか分かってんのか!?それに相手もいつも1人とは限らないんだぞ!

だからメイヒュー教官は頭を使えって言ってるの!言葉で反論しろって!冷静になって視野を広げろって!仲間を増やせって!

僕もその通りだと思うよ!周りを見てみな!ちゃんとしてる奴の方が多いんだぞ!変な奴なんかほんの少しだ!!君、分かってないだろ!

いっつも相手かまわず毛を逆立てた猫みたいにフー!フー!って!そんなんだからちゃんとした子達が君に近付けなくなってるんだよ!

今回だって何人かが僕やメイヒュー教官を呼びに来たから今こうして話してるじゃないか!

誰も彼もが敵じゃないんだぞ!そんなのちゃんとした奴らにも失礼だ!」


生まれて初めてできた友人、神羅での唯一の友人ジャーヴィス。

無口でマトモな話もできないクラウド。

いつも楽しく笑って話してくれるジャーヴィスに本気で怒られ、教官からも親に連絡すると予告され、クラウドは完全に落ち込み項垂れた。

「あのさ、皆ソルジャーとか神羅兵になるためにここに来てるんだ

僕らはこの訓練兵期間を無事に卒業しなきゃ神羅兵にはなれないんだ

でも君は問題ばっかり起こしてる。怒ってばっかり。だからマトモな子達は近付けない。フォローしたくったってできない

フォローしたいんだよ、本当は。でもできる事とできない事がある

喧嘩してる君達の間に入る事は出来ない。だって当事者になっちゃったら自分達の評価に関わって来るからね。だったら何ができるか

僕や教官を呼んで酷い事になる前に食い止めさせる……ね?敵ばっかりじゃないだろ?

君もさ、つまんない奴と喧嘩するために神羅に入ったんじゃない

ソルジャーになって、ソルジャー1stセフィロスと一緒に戦う!その為に学校カットしてここに来た!僕だってそうさ

それが一番重要な事だろ、僕らにとって

だったらさ、変なこという奴は無視しよう?つまんない奴らなんかゴミだと思えばいいよ!相手なんかしなくていい!」

「……分かってる。分かってるけど、無視してたって絡んでくるんだ!俺が何か言うまでしつこい!言えば言ったでもっと…………どうやったら放っといてくれるんだ!我慢したって!……分からない…なんで俺が悪くなるんだよ…」


男ばかりの組織の中ではおかしな現象が起きる。

男を女に見立てる者もいれば、自ら女の役割をしたがる者も現れる。

どちらにせよ、それが本人の意思であればどこにも被害者なんかいない。

悲惨なのは、望まない男が女役を強制される事、身に覚えなど一切無いのにオカマ扱いされる事。


「クラウド、実際にキミは今年入社の中で一番小さいし、ミッドガル育ちの僕だって見たことないくらい可愛い顔してる

先ずはそれを認めたらこれは君の性格やプライドとは関係の無い事事実は事実

それを認めたらルックスをどーのこーの言われたって腹も立たなくなる

でもルックス以外の事を憶測で言われた時、その時は怒ればいいじゃんその時は遠慮なく怒っていいから僕も味方するから!きっとその時は他にも味方になってくれる奴らも出てくるから!だってそれは不当な事だし、怒っていい事なんだから!ね?

クラウドが怒鳴りつけた。

「可愛くなんかない

「可愛い

カウンターで言い返されたショックで小さく震えながらまた横を向いてしまったクラウド。

どれくらい傷ついているかジャーヴィスには察しはついていた。

だって、クラウドは自分と同じなのだから。

男として、ソルジャー1stセフィロスの隣に立ちたいと思うほど、男の夢を持っているのだから。

でもこんな事では、今の危険な状況は回避できない。

メイヒュー教官にも警告された。

今のクラウドは親元に帰るか、仲間を早急に増やさなければ事故が起きる可能性が高い。


「大丈夫だってクラウド僕たちはこれからどんどん大きくなっていく

君が可愛いのなんか今だけこれからどんどん不細工になっていくよ間違いない

「お、俺、不細工になりたいわけじゃ…」

「大丈夫!大丈夫!前に僕のつ離れた兄さんの話したろ

僕の兄さん、10…歳くらいまではさ、天使みたいに可愛かったんだ

瞳が宝石のエメラルドみたいにキレーなグリーンでさキラキラして白目の部分が青みががっててさ、頭が天然ウェーブの金髪で鼻がツンと尖ってて、本当に絵画の天使そのままで、誰が見ても”地上に舞い降りた天使”って言ったよ!

その頃の兄さんはとにかくモテた!大人にも女の子たちにも、モテにモテた!モテまくった!

子供のころ僕が公園で遊んでると、知らない女の子に"お菓子あげる"とか言われてさ、付いていくと兄さんの事根掘り葉掘り聞かれたりとか、"渡して"とかモノ押し付けられたり

でも僕の兄さん、すっごい偏屈なんだ。生まれつき!

その頃も僕が押し付けられたモノを伝書鳩よろしく”渡してって言われた”って渡すと"貰う理由が無い。返して来い"って

そりゃ無理だってどこの誰に貰ったのか僕には分からないんだから。

そんなんで、そりゃー色々迷惑したよ。モテモテ兄さんの凡人弟としては

でも自慢でもあったよ。僕の兄さんモテモテなんだぞ!天使なんだぞ!って。


ところがだ兄さん、二次成長期が来てビックリするくらい汚くなった

そりゃもう僕だけじゃない、周りの皆も驚いた

急激に残酷に次成長期が来て、半年くらいでクリクリふわふわだった金髪はごわごわぐりんぐりんの黒髪になって、スンナリ伸びていた手足はブリブリ筋肉ですね毛がボーボージャリジャリになって、おまけに胸毛まで生えてきた!!オーマイガッ

クリンとしてた目はどういうわけか細いもったりした目になって、青みがかってた白目も気が付けばフツーに汚い白目になってた、、そうなってくるともー天使の面影なんかどこにも無くて、それどころか逆にそりゃーもー立派に汚くてモサい不細工が出来上がった

もうね、周りも僕も絶句ドン引きだよ何なのコレ!?こんなのアリ!?って

間近で変化を見てた僕も二次成長期ってコエー残酷だーってつくづく思った

でもまぁ僕にとっては兄さんは兄さんだからね、結局そういうもんか……って納得した

でも他の奴らは笑えるくらい反応も態度も変わった

特に呆れるくらいに変わったのが、なんとかして兄さんの情報を手に入れようとしてた女の子達

兄さんにキャーキャー言ってたくせに!そんな人しりませーん、見たこともないでーすみたいになってさ

あと兄さんがモテモテだったのが気に入らなかった男達がモテなくなった兄さんを苛めるようになった

でもって虐められっ子になった兄さんを女の子たちはしーらない何にも見えてませーんってスルーだった

ほんっと本当にクソな奴らだった

でもそんなふうに周りが手のひらを返してきても兄さんは何も変わらなかった

兄さんは何も言わなかったけど、学校で殴られたり蹴られたりするようになった

普通さ、そんな事されると、そんな事をされる自分が恥ずかしいとか思っちゃって、殴られたり蹴られたりで汚れた服やモノ、自分で隠しちゃうじゃん。虐められっ子って皆に思われたくなくて

でも兄さんはそのまま汚れたまま授業に出るし、汚れたまま歩いて電車に乗って歩いて家に帰ってくる

制服やカバンに靴の裏の跡がいっぱい付いててさ、そんなん見ちゃった僕の方が泣いちゃったよ

そんなんだから親にも虐めは伝わってたみたいだけど、結局最後まで動かなかった。親も、僕も

余計な事に口を出すと兄さん、怒るんだ。本人が言わないうちは家族は誰も動けなかった

結局、兄さん一人で戦い抜いた

クソなや奴らに教科書を隠されても捨てられても、兄さんは"僕は絶対にここに入れておいた"って引かなかった

嫌な先生とかは"じゃあ誰かが隠したって言いたいのかお前はクラスメイトを疑うのか"とか言いやがって

そうすると兄さんは"そんな事は一言も言っていない、僕に落ち度は無かったって言っている。なのに無くなったのは学校側の管理責任だ"って…

ね~そういう人なんだよ、兄さん

結局何日かしたらどっかから兄さんの無くなった教科書がボロボロになって出て来たらしくてさ、無い間は先生から新しく教科書を出されてたんだけどさ、本が出てきたからって兄さん、借りてた教科書を先生に返したの

出てきたのボロッボロになってたんだよ

キレイな方にしたらって先生が言ったら"これは僕のじゃない"って、ボッロボロの教科書に自分のサイン入れたところを指して”僕の名前がある、僕のだ”って

兄さんはそんなふうに良くも悪くも万事にブレない人だったから、虐められ始めた時は兄さんの周囲には誰もいなくなってたけど少しづつ兄さんの友達になりたい連中が寄ってくるようになった

学校で虐められてる奴は兄さん以外にもいたしね

そういう連中からしたら兄さんみたいなブレない人に寄りかかりたくなったりするんだよね

でもやっぱり兄さんブレない

兄さんは昔から熱帯魚が好きなんだけど、その好きな事については人とスッゴクお喋りするし、家にもお招きもするけど、単純に兄さんにすり寄ってくるだけの連中はほぼ無視だった。ロクに返事もしない

兄さんと仲良くなるために熱帯魚の勉強をして、それで兄さんと話して、そんで知識の違いに恥をかいて、もっと勉強して、そんで兄さんとディープな話で盛り上がれるようになって、そんで結局本当にハマっちゃう奴もいた

弟としてはそんなマイペース過ぎる兄さんにムカつくこともイラッとすることも多くて"好き"っていうのとは違うけど、自慢なんだ

兄さんみたいになりたいとはちっとも思わないけど、尊敬とかも全然できないけど、とにかくブレなさは本当に凄いんだ

てか、多分どっかおかしい人!でもメンタルは超絶強い

だからクラウド、どうせ君も不細工になるんだからつまんない事でいちいち喧嘩すんなよ

僕、今までにキレイな大人の男なんて見たことないもん

だから君もそのうち嫌でも汚くなる絶対だ!!そうなった時、周りは本当にビックリするくらい掌返すからさ、それに耐えられるくらいメンタル鍛えておかないと

「……まぁ……うん」


なんだかよく分からないまま言いくるめられてしまったような気がしないでもないが、反論するものでもないような…とりあえず言ってる事は合ってるような、そうなのかと思いつつ、でもジャーヴィスが言うのだから合っているのだろうと、クラウドは肯定した。

「大丈夫ちゃーんとそのうち...うん、きっと君みたなのこそ、すっげえモッサくなって、すね毛・胸毛どころか耳毛まで生やしちゃったりすんだぜ

あと胸毛や腹毛がボーボー過ぎて、乳首のとこだけ毛が生えてない奴になるんだーぎゃーキモーイ!!

ジャーヴィスが自分の両方の乳首の辺りをクルクル回しながら言った。

「そ、それはさすがに…」

「ねえあれって逆にやらしいよね全身毛むくじゃらなのに乳首のとこだけポチンと毛が生えてないの

乳首以外がモッサモサ熊五郎なんだぜ!?

そこだけピンクでさもう乳首はここですって感じじゃんキモーーークラウドはきっとああなるんだ!!キモーーーー!!

乳首の辺りをクルクル回し続けながら変な踊りを踊り始めるジャーヴィス。

「ならない

「なるなるそんで超モテないムサ男になって皆からクマさんとか呼ばれて"俺だって昔は可愛い少年だったんだぞー"って今の写真を後生大事に持ち歩くんだキモーーークラウド、キモーーー!!

何でこんな事を言われているのか分からないが、とりあえず変な事を言うジャーヴィスを必死に訂正した。

「キモくない

「この逆乳毛男キモーー!!

乳首クリクリを続けながら踊りながら、追いかけて来るクラウドから逃げるジャーヴィス。

「違う逆乳毛はお前だ

「いやお前だエンガチョ

「違うエンガチョ返し

「エンガチョ返しの返し!!クラウドのチン毛ボーボー!!

「な!?

「クラウドの耳毛ボーボー

ジャーヴィスは追いかけるクラウドから走って逃げ回りながら「クラウドの腋毛ボーボー」と、その個所から毛が生えるアクションをし、「クラウドの鼻毛ボーボー」と、「止めろ」と追いかけ怒るクラウドから逃げ回り、クラウドは訳が分からないまま恥ずかしさで赤くなりながら「止めろってば!!」と走り、ジャーヴィスはまだまだ「クラウドのすね毛ジョリジョリー」「クラウドの胸毛ボーボー」と言い、ドタバタと逃げ続けながらも段々と毛のバリエーションが無くなってきて、走りながら後方のクラウドに顔だけ向け、「クラウドのー……へそ毛ー」と閃いた毛を言ったところで壁に思いっきりぶつかり「グハッッ」と悲鳴をあげそのまま座り込んだ。

「………」それを見てクラウド、クラウドを見上げたジャーヴィス、人爆笑し合った。



セフィロスに付きまとわれて迷惑してた

そのセフィロスがいなくなったんだ放っておけば良かったのに!!

本当に救いようのないバカだ

なんでこんなにバカなんだ!!

どうしてこんな所に来るなんて思ってしまったんだ痛い痛い痛い痛い痛い痛い


『ママーお兄さん何か喋ったよー来て来てー

『ハァーンどうせ"あー"とか"うー"でしょ放っておきなさい』

人の声がする……何故だ

俺は確かどこかの教会跡地みたいなところでセフィロスに………セフィロス!!アイツどうなった!!あれから何日経ってる!!

「……

起き上がろうとして、身体といい頭といい、全てがバラバラになるほどの激痛が一気に訪れた。

起き上がったつもりが全く動けないまま、どこかの部屋の天井が眼に映った。

どこだ…ここは……考えただけで頭から心臓へ突き抜けるような痛みが走った。

突然視界にポンッと女の子の顔が現れた。

女の子と目が合った。

視界からスッと女の子が消えた。

「ママーお兄さんの眼ぇ光ってるー見て見てーママママ

「はいはい今行くわよ」

視界の高い位置に短髪のオッドアイの女性が現れた。

年で言ったら30前後、気の強そうな

「あら本当ねぇ、目ん玉の中に朝の海があるわねぇ。きれいな目ん玉

あなたフォルトゥナの教会跡地に落ちてたんだけど、何者

ウチに運んでもう日。あなた身体が崩れたり元に戻ったりを繰り返してるけどソレどんな仕組み

!?セフィロスはどうなった!?

「ん…あぁ、喉が渇いて喋れないチョット待って」

視界から女性が消えた。

「マリー、お水持ってきてくれる

「はいマリー、行ってくるね

女の子がパタパタと走る音がした。

急にまた痛みがぶり返してきて思わず悲鳴をあげると

「あなたってマジン」と、女性の声がした。

「人間ぽく見えるけど何度も死んで生き返って崩れて戻ってを繰り返してるし、翼が現れたり消えたり。

ホント、どうなってるのその身体

あなたの隣にいた死体は悪魔よねダンテが倒した奴

あっちは死んだままなのにどうしてあなたは復活するの

「ママーお水ーたっぷりたっぷり

「ありがとうマリー、良い子ね」

子供が喜ぶ気配がする。

突然視界に大きく女性の顔が現れ、口が塞がれた。

温かい水が口の中に流れてきて思わず条件反射で水を飲み込んだら、また激痛が襲ってきて思わず全身が硬直した

「あっぶなーい!舌噛まれちゃうところだった

「……す…み……ま……せ……ん」

明らか自分の非礼だったので、ちゃんと目を見て謝りたかったが、どうしても身体どころか視線の一つすらがピクリとも動かせなかった。

口を小さく動かすのも激痛を伴い再び激痛の波が襲ってきて、そしてプツンと意識が切れた。



訓練が終わり、シャワーで汗を流した後、タオルで身体を拭こうとしたらタオルが無くなっていた。

…もう何度目か…追及するのも面倒でジャーヴィスにタオルを借りて拭き、下着を穿こうとしたらそれも無くなっていた。

「………」

「…悪いけど、パンツは貸したくない…」

ジャーヴィスが申し訳なさそうに嫌そうに言った。

「俺だって借りたくない」

「どうすんの

「……仕方ないだろ」


ジャーヴィスと共に昼食を摂りに食堂に向かった。

その途中、前方に明らかな上級兵の集団がいた。

通常過ごすうえで上級兵との接触は殆ど無い。

体格や力、知識の階級差がハッキリ出る事もあり上級兵、下級兵、訓練兵では学ぶ建物も訓練をするグランド、施設も完全に別れて接触もない。

今年入社の訓練兵の中で一番背の低いクラウドと目の前の上級兵達は身長にして40cmは違う。

その集団がクラウドを見下してニヤついている。

速足く通り過ぎようとしたジャーヴィスとクラウドだったが、その行く手を塞ぐように上級兵人が立ちはだかった。


「マジ可愛い顔してんな

な、お前がクラウド・ストライフだろ俺らの方にも噂が来てるぜ

お前そんな可愛い顔してスッゲエ気が強いんだってな教官も恐れないトラブルメーカーなんだって

上級兵集団を避けて歩こうにも全員身長180cm超えの男人に通路を塞ぐように横一列に並ばれてしまっては通り抜けられない。

「ベイビーお嬢ちゃんここは狼だらけだぜ食べられちゃうぜーそれとももう食べられちゃった

下卑たアクションで笑いながら人の上級兵が話しかけて来る。

残りの一人は一歩引いた所で嫌な笑い方をしている。

もう通り抜けられないと判断したクラウドは、ジャーヴィスに仕草で戻ることを伝え、人で振り返ると即座に人のうちの人が行く手に立ちはだかった。

「なあ、お前本当にチンチンついてるの信じらんねーよ

マジ美少女だなちょっとチンチン見せろやどんな可愛いのぶら下げてんのお兄さんたちに見せてみなさい」

後ろの二人が大きな太い声で廊下に響く馬鹿笑いをした。


突然ジャーヴィスがクラウドの手首を握り、物凄い勢いでダッシュをし上級兵人を突破し走って走って走って、とにかく角という角を曲がりまくりクラウドが息切れを起こし「も・無理…」と走れなくなるまで走り続けた。

周囲を見渡し、もう大丈夫だと判断しその場に人でヘタリ込み息が落ち着くのを待った。

人の息が落ち着いてきた頃、ジャーヴィスがホッとした様に言った。

「ヤバかったクラウド、パンツ穿いてないのバレるとこだった

酷く落ち込みかけていたクラウドだったが、ジャーヴィスのその言葉に思わず…笑った。

泣きそうだったが、もう笑うしかなかった。



痛みや体の不調は度が過ぎるとただそれだけの存在になってしまう。

痛い痛い痛いそういう生き物。

過去も今もm先もmm先も何も無い

痛みや嘔吐感、ただそういう塊

苦痛の芋虫のような生き物。

いつだって俺の選択は間違ってた。いつだって!!



教室移動をするのに廊下を歩いていた所、突然空き教室の扉が開きクラウドは引き込まれた。

何が起きたのか分からず、廊下を歩いていたはずの自分は何故か誰かの腕の中にいた。

目の前には何故か誰かの胸板がある。

それを伝って上を見上げれば……先日人で揶揄ってきた上級兵の喋らなかった人だった。

「今日は俺一人で来たぜ奴らがいると目立ち過ぎるからな

ゾワッと鳥肌が立ったのは恐らく本能的な恐怖心。

必死にその腕の中から逃れようともがき始めたクラウドを更に強く腕の中に閉じ込める上級兵。

「俺、キャラハンってんだ。お前本当に可愛いよ、クラウド

マジで聞きてぇんだけど、男とヤったことある

必死に逃げようともがくクラウドだったが、ガッチリと抱え込まれてどうにも身動きができない。

「キスくらいなら経験あんだろ

なあ、俺にもチューしてくれ。チューしたら解放してやるぜ、ベイビー・クラウディア

動けなくてもそれでも、もがき暴れているうちに持っていた移動用具の角がキャラハンの股間を直撃したらしい。

突然「ウッ」と腰が引けて腕が緩んだ。

その瞬間に腕から逃れ教室から逃げ出てそのまま次の授業の教室へ走って走って走って脱兎の如く逃げ込んだ。

「おークラウドギリギリどうしたのいつも早めに来るのに。ウンコでもしてた

ジャーヴィスが揶揄うように声をかけてきた。


胸の動悸はまだ収まらず、荒い息を繰り返しながら「うるさい」と答えるのが精一杯だった。

教師が入ってきて授業が始まっても震えがいつまでも収まらなかった。


分からない、分からない……

何を警戒たらいいのか分からない、けれど…

見えないもので包囲され、それが狭められてきているような気がした。

気のせいだろうか…

気のせい

きっと気のせい…

俺は神羅兵になって、ソルジャーになるためにここに来たのだから。

……皆そうなのだから。



目が覚めた時、場所は前回目覚めた時と同じベッドルームだったけれど人の気配は無かった。

一体ここはどこだ。

運んで来て日経ってるって母親の方が言ってた。

そんなに長くベッドを占領して他の家族は怒ってないのか

聞こえてくる物音からしてここはどこかのマンションの一室。

そして今この家には誰もいない。物音がしない。

また痛みの波が襲ってきて痛みにしか感覚がいかなくなり、また意識が真っ暗闇の汚泥の中に引き摺り込まれた。



授業が終わり寮に帰ってきた時、クラウドとジャーヴィスの部屋の前に人だかりができていた。

2人が人波を掻き分け部屋の前に立つと……ドアノブに汚れた下着が掛けられていた。

その汚れはそういう汚れで、強烈な悪臭を放っており、下着も変色してガビガビに固まっていた。


「…………何だよコレ…」ジャーヴィスが青褪め震えている。

「それ、ストライフのだろ。ゴムのとこ名前が書いてある」

人だかりの中の誰かが言った。

言われて汚れまくったパンツをよく見てみれば"ストライフ"確かに名前が入っている。

皆と同じ支給の下着を使っているので名前を入れておかないと直ぐに無くなってしまう。

入れても無くなるわけだが。

それがこんな形で返ってきた。

「だ・誰か袋持ってない!?な、何でもいいから

ジャーヴィスが強烈な臭いに鼻と口を押えながら集団に声をかけた。

「あ、俺部屋から持ってくる

集団の中の誰かが答え、直ぐに戻ってきた。

渡された袋を広げながら「ありがとう」と忌々し気にジャーヴィスが言い、ドアノブにかかっていたパンツを袋を裏返して回収した。

「焼却炉行こ

皆に聞こえるように大きな声で言い、ボーと立っているクラウドの手首をつかんでジャーヴィスは今来た道をまた戻っていった。

人を見送る集団は互いに声を潜めて囁き合っていた。

人目が無くなってからジャーヴィスが

「最悪だキモイ

ヤバイ変態がいるぞクラウド、これはマジで気を付けないと駄目だ

そう言いながら焼却炉に袋ごと投げ入れた。

クラウドはボーとそれを見ながら「アレ、何の臭い」と聞いた。


「あ

「アレ、シャワー室で時々すごく似た臭い嗅ぐ気がするんだけど、あれは何の臭いだ

くさい。あれは何に使うものなんだ

「…………………え

「いやがらせ用の液体なのかもしかして」

「…………」

まさか……いや、まさか…いや、でも…

知らないわけはないと思ったが、でもクラウドなら…もしかして……迷った挙句ジャーヴィスが言った。

「く・栗の花があんな匂いがしたねそういえば

「栗の花……ヒデー臭いだな

シャワー室で誰かがコロンか何かで使ってるのかな。迷惑だな

ジャーヴィスはクラウドが本当にその臭いの正体を知らないことに衝撃を受けた。

臭いを知らないっていう事は、つまり一度も出したことが無いって事だ。

あどけなく可愛いクラウドはもしかして次成長期がまだ来てないのかと思っていたら、更にその手前だったことをジャーヴィスは悟り、本格的なヤバさを予感した。


「ク・クラウド。赤ちゃんがどうやってできるか知ってる

「は

「知ってる

「……知ってるに決まってるだろバカにしてるのか!?

何で突然そんな事聞くんだと眉を顰めたクラウド。

「いいから言ってみなどうやったらできるのか」

「はあ!?何なんだよお前!!

「いや、これは今必要な話なの!言ってみ!

信頼し、いつも一緒にいてくれるジャーヴィスの真剣な顔に、思わずクラウドも答えた。

「お、男と女がセックスしたらできる

どうだ!言ってやったぞ!と表情が語っているが今はそれどころじゃない。

「間違ってないけどそれだけじゃできない。セックスしたらできるなら世界は子供で溢れてる

ヒント、コンドーム」

「……コンドーム…あぁ、アレって結局何に使うんだHな事に関係してるのは知ってるけど

精一杯の知識を披露したクラウドだったが逆に勃起したことすらないのだとジャーヴィスは察し、絶望的な気分になった。

「赤ちゃんは女が身体の中に持ってる卵に、男が持ってる精子が突撃してできるんだ」

「知ってるよそれがセックスだろ!?

「そう、セックスして男がチンコを女のHなトコに突っ込んで、女の腹の中の卵に精子を突撃させる

コンドームは子供はまだ欲しくないけどセックスしたい、女のHなトコにツッコミたいって男が精子をガードする為に使うものなんだ」

「へえ…」

へぇ…じゃないよ…あまりにボケているクラウドにジャーヴィスも段々腹が立ってきた。

「今捨てた臭いヤツはその精子の臭い」

「は

「それと僕らくらいの年になれば、まあ99%のヤツはもう精子を何回か出してる」

「え!?お前も!?セックスしたことあるの!?

「違うよ。ある程度の年になれば勝手に体が精液を作っていくんだ

放っておくとどんどん貯まっていって、いつでもなんかこうムラムラするようになっちゃって、女がいなくても出さなきゃ収まらなくなるんだ。

皆よく言ってるだろ朝勃ちとかオナニーとか勃起とか」

「あ、うん…何かHな意味で言ってるのは知ってた」

"知ってた"じゃないよどんだけボケてんだ何で僕がこんな事言わなきゃいけないんだ

恥ずかしくも腹を立てながら、でも今言わなきゃ駄目だと自分を奮い立たせジャーヴィスはクラウドに性の知識を与えた。

「勃起はチンコが精液出したいよーってサイン。朝勃ちは朝起きたら勝手にチンコが勃起してる状態

オナニーはもうムラムラが限界突破して自分でチンコ弄って精液を出す事

つまり君のパンツがそういう事に使われたのを皆に見られちゃったから、多分これから皆にそういう事を言われるようになる。特に頭のおかしな奴らに

クラウド、これからは今まで以上に気をつけなきゃ駄目だし、ちょっと友達作り、とりあえずクラスの中だけでも5人は作ろう!今日明日中に!」

「今日明日?無理だって。俺、アレックスしか友達出来たことない

でも喧嘩はしないように頑張ってるぞ!俺のパンツがティッシュ代りにされてムカついてるけど!怒らないように頑張るそ!!

「う、うー。えーと、だからこれからは私物も教材も全部肌身離さず持ち歩こう僕も手伝うから

「あー、はは、なんか俺、アレックスの兄さんと同じになっちまったな」

「………まあ、…うん…」

無邪気に笑うクラウドにジャーヴィスは言葉を濁した。



嫌だ、もう嫌だ

思い出したくない

もうずっと忘れてたんだ消えてくれ違う全部違う全部全部違う

俺は関係ない全部俺じゃない知らないあんな奴俺じゃない

知らない知らない

知らない

知らない

忘れろ!!



目が覚めるとまた一人……前回と同じ部屋。

今度は少し体が動きそうなので動かしてみたら全身に激痛が電気に打たれたように走り

また真っ暗闇の中に引き摺り込まれる

嫌だ思い出したくない!!嫌だ!!俺じゃない俺じゃない

違う知らない

知らない

止めてくれ!!お願いだ思い出すな!!

お願いだ止めてくれ!!

止めろーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!



「お前、いよいよ目ぇつけられたんだってロッカーにぶっ掛けられてたらしいな机の中にも使用済みゴムが入ってたって大人気だなベイビー・クラウディア

あれ以来上級兵キャラハンは周囲に見せつけるようにクラウドを腕の中に囲いこむようになった。

前回の失敗から、急所攻撃を用心しているキャラハンはクラウドを後ろから捕らえる。

そのせいでどんなに暴れても逃れられない。

「だ・か・ら言ってるじゃないか。俺が守ってやるって

俺と仲良しになったらお前の周りの変態どもを全部片付けてやるぜ

その言葉に腕の中でもがいていたクラウドの動きがピタッと止まった。

「……全部

「ああ、大体やってる奴の見当はついてるからな俺、マジでお前気に入ってんだよだから俺のモンになれよ?守ってやる

「全部って、、変な事やってるの、一人だろ

クラウドの答えにキャラハンが虚を突かれたように一瞬動きが止まり、そして「ハッ」と笑った。

「おっまえマジか当事者がこれかよヤバくね!?いやいや、ヤバイぞ!!

ベイビ~それじゃ誘ってるのと同じだいくらやっても僕は気づきませんってメッセージだソレ

そりゃ~奴らもやりたい放題になる!無理もねぇわ!

俺が特定してるだけでやらかしてんのは6人いる

ちなみに怪しい奴は13人超えてるクラウディアそんなんじゃマジでヤられるぞ、遠からず

お前、本当にヤバイぞ悪い事は言わない俺にヤらせて俺の傘下に入っとけマジで守ってやるぜ

陰に隠れてこそこそイタズラするような変態野郎共も全部潰してやる

こう見えても俺は紳士だからな無理矢理は趣味じゃない

取り引きでいいからセックスしようぜ。俺のものになれよベイビー・クラウディア



「おにいさん、いたい

女の子が泣きそうな顔をして見ている。

痛みが浅くなってきている気がする。

女の子がタオルで顔を拭った。

そうされて初めて泣いていることに気が付いた。

とっくに忘れていたはずの事。

忘れてたんだ思い出すなよ!!

二度と思い出すもんか

あんなの知らない、あれは俺じゃない

「おれ…来て…何日…

俺じゃない俺じゃない

忘れろ

「きっ…昨日が11だったからっ、ひっ、き・今日は12っ。ひっ」

俺の顔を拭く女の子が泣いてしまっている。

なんで泣いてる。何か哀しい事でもあったのか。

「…もう一人…知ってる

「ひっ、ひっ、お兄さんと一緒にいた、ひっ、悪魔っへぐっ」

「…うん」

「ママがおっ、お兄さんだけっ、連れてきたって……うっ、言ってた。悪魔は死んでたって

お兄さん、もう泣かないでぇ……うぇぇぇ~

いや、泣いてるのは君だろ、俺のは、これは俺の意思じゃない。俺は関係ない。

12日も経ってるのか、もう腐ってんなセフィロス……動けるようになったら骨だけでもどこかに葬ってやろう

「ママっ、えっ、お・おそうじのっ、仕事ちゅうなのっ。マリーはおにいさんのかんびょうなの…っ...

あぁ、意識が消える………

どうか、どうか、もう二度と夢なんか視ませんように

視ませんように。

忘れてたんだから。

忘れられるんだ忘れてくれ頼むお願いだ二度と思い出すな

消してしまえ塗りつぶせ黒く黒く真っ黒に

何もなかった俺は何も知らない

知らない知らない知らない



「ストライフお前は学生ではないんだぞ

確かに今のお前の手元にはこずかい程度の金しか渡ってはいない

だがお前が食べている食事制服全てが神羅から支給されている

お前を一人前の兵士にするために神羅は先行投資している

お前はその投資に応える義務があるそれを契約というのだ

だが今のお前は授業も訓練も欠席を続けている

契約違反も甚だしい

自らが締結した契約も守れないのなら今すぐ辞めろ


訓練兵から神羅下級兵に上がった。

クラウド・ストライフの進級は奇跡だと皆が言った。

下級兵になっても寮部屋はアレックスとクラウドが同室のままで、2人で進級を祝った。

そしてアレックスが消えた。


いつものように朝一緒に寮を出て、一緒に朝食をとり、割り当てられた授業が違ったから「またな」と手を振って別れた。

それきり。

一緒に昼食をとるはずだった。

いつまで待っても来なかった。

午後の授業の最中に空調室で血まみれの半死状態になっているアレックスが教官により見つけられた。

救急病院に運ばれ、そのまま一度も寮に戻る事も、誰と接する事も無く神羅から退籍された。

誰もが言った。

アレックス・ジャーヴィスはストライフの犠牲になった。

クラウドと違って友達の多かったアレックス。

同室のトラブルメーカーの盾にならなきゃこんな事にはならなかった

ストライフのせいで誰もが言った。


「ストライフお前の件も、ジャーヴィスの件も大まかには聞いている

だがそれはすべて外野から聞いた話だ

当事者であるお前が黙っていては我々教官はどうする事も出来ない助けてやれない

このままでは辞めざるを得なかったジャーヴィスも可哀想だ

お前も今のままでは近々解雇だ

何があったのか言葉にしろそうしなければお前を救ってやれない


下級兵で新しく担当になったオースティン教官。

凄く評判の良い教官。

新兵の育成が巧くて、本来は脱落してしまうような奴もオースティン教官に担当してもらうと上に登る階段を専用に作成してくれる。

「ストライフ、神羅が今のお前を解雇するのは何でも無い事だ。毎年たくさんの脱落者が出る。お前はその中の一人

このまま辞めればきっとお前がいた事などほとんど誰にも知られぬままに終わる

だがお前自身はどうだ

田舎に帰って親に何と説明する

お前の田舎には神羅屋敷があるだろう」

ハッとしてクラウドは顔を上げた。

「知ってたんですか!?

オースティン教官は窘めるようにニッと笑って言い直させた

「ご・存・知・で・し・た・か

オースティン教官は兵士たちとの間に明確な一線を引く。

その明確さが逆に兵士たちを迷わせない。

「ご存知でしたか…」

「教育係とはそういうものだ

ストライフ、こんな状態で田舎に帰ってどうする

神羅屋敷には今でもたくさんのソルジャー、神羅兵、社員が出入りしている

ニブル山にも大きな魔晄炉がある

もしお前を知っている奴がニブルヘイムに行ったらどうする

村で会った時にお前はソイツにどんな顔をするつもりだ。逃げ回るつもりか

逃げ回るお前を見て母親はどう思う、村の人たちはどう思う

ストライフ、お前はこのまま辞められるのかそれで解決するのか


クラウドは唇をきつく噛んだ。

そんな事は今更教官に言われるまでも無いのだ。

とっくにニブルヘイムに帰りたかった。何度も何度も考えた。だから帰る道などどこにもなかった。

帰りたくて、帰れなくて、でも帰りたくて、母に会いたくて、こんな生活は嫌で、どこにも行き場が無くなってしまった。

帰れない、行けない。

唯一できた友人アレックスがいなくなったのがとどめだった。


「ストライフ、神羅ではたくさんの人間が働いている

当然たくさんの問題が起きて来る

お前が抱えているような問題も毎年起きている。珍しいものではない

神羅にはお前が抱える問題にも対応できる用意がある

お前が身動きが取れないのなら我々教官が動き、お前の進む道を作る。そういうのも教官の仕事の一つだ

だが、それもお前が言葉にしてこそだ

ストライフ、辞めるにしても残るにしても後悔を残すな

ここで言えない事をお前は田舎に帰って母親に言えるのか?隠し続けられるのか!?


言いたい事、叫び出したい事、ブン殴って、ぶっ殺してやりたい怒りなど山の様にあるよ

どんなに土下座されようとも「絶対に許さない」って言ってやりたい事だっていくらでもあった

でもでも!どれも情けなさ過ぎて口に出せない

俺は、俺は何でこんな事になってる、帰りたい、ニブルヘイムに帰りたい、帰りたい!帰れない…どうする事もできない何も選択できない進む道がどこにも無いんだ

アレックス!俺はどうしたらいいんだ!


オースティン教官が溜息を吐き言った。

「場所を変える。付いてこいストライフ」



「………っ

全身の激痛と喉の痛みで意識が戻った。

心臓がバクバクと煩く鳴り、息が切れて全身汗で濡れている。

口の中が血の味がする。

「び・びっくりした

声のした方を反射的にビクッと見ると、驚愕の表情の母親と今にも泣きそうな顔をした女の子がいた。

「ちょっとー、イキナリ絶叫は勘弁してもう、こっちが心臓止まりそうだったわよ!」

女の顔がユラユラと歪んで見え、自分が泣いている事に気が付いた。

体の芯から震えが起きる

もう気が狂う

もう無理だ

無理だ思い出したくない

嫌だ忘れろ


「ちょ、ちょっとちょっと

激痛に悲鳴をあげる身体を無視し、体重を移動させベッドから転げ落ちた

きっとこのベッドが悪いんだ。

悪夢ばかり見るのはきっと場所が悪い

忘れたんだ。もう二度と思い出さない。

何もかもベッドのせいだ

部屋のドアを目指して体重移動させながら這って行った。

「ちょっと、あなた何がしたいの!?

午前中まで死体になってた人が何やってるの!!

必死に這おうとしているがなかなか前に進まないクラウドの肩を女が掴んだ

その瞬間、全身に強烈な悪寒が走り、手を勢いよく振り払った

驚く女と

「あ、す・すいません…」やってから謝るクラウド

それで少し考えて

「あの、死んでた悪魔ってどこにいますか

「え…」

「俺と、一緒にいた、死んだ悪魔」

「……フォルトゥナ大聖堂跡地だけど

「そこ、どうやったら行けますか

「あなた、あそこにいたのにあそこを知らないの…どういうこと

「………」

「…いいけどさ、今は行けないわよ

「………」

「なんでみたいな顔して、こっちが何でよ。今は夜よ

「場所、教えてくれたら、自分で行く」

「あなた、記憶喪失か何か

「………」

できればそうなりたいよ、全部忘れたい。

全部、何もかも無かった事にしたい

無かった事にしてくれよ。頼む


「いいわ、じゃあ先ずそこの窓まで移動して

出来るわよね大聖堂まで歩こうって人なんだから」

クラウドは必死に窓まで這って行った。足が動かない。

いつの間にか女は両手に見た事の無い型の銃をそれぞれ持っていた。

銃を持ったまま内側の窓を開け、外側の雨戸に手を掛けながら「あなたは外を見ていなさい」

そう言って雨戸をあけた。

途端に地上で踊り狂っていたモンスター達が窓から漏れる明かりを目指して飛んできた

女はダブルハンドで片っ端から連射しまくり、それらを撃ち殺していった。

そうして一旦モンスターの波が収まると雨戸を勢いよく閉め、窓を閉め、カーテンを引いた。


「でそんな体でどうやって大聖堂まで行くって

女は銃をクルクル回しながら馬鹿にしたように言った。



喪失の向こう側2   NOVEL

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これで本編でのクラウドの神羅時代の大半は終わり。次からクラウドのDMC時代にシフトチェンジ。

クラウド神羅時代は「番外編スパイラル!」で分けました。

ちなみに本編だけで完結まで話はちゃんと繋がります。

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