はじめに この章はバイオハザード1~3の設定・ストーリー・トラップを超脚色し、更に登場人物はFFチームのみ。 敵との対決に魔法・召喚を使っているので元ゲームの醍醐味はゼロです。 また、セルフィが変な関西弁を喋ってますが、ゲーム本編が関西弁のようだったのでそうしましたが私は関西弁を知りません。故に関西弁を知らない人が無理矢理関西弁を使ってるような変な喋り方になっていると思われます。そういう意味でも閲覧注意。申し訳ないです。 迷い子1 編集中 暗雲垂れ込める宵闇の空、一機の軍用ヘリがエスタ国から飛び立った。 ヘリが向かっている先は、2週間前に正体不明のウィルス感染が発生し、死者が多数出始めていると報告があったエスタ国ラクーンシティ。 感染力、致死率が高い新種ウィルス発生という大事件に、その日をもってラクーンシティは閉鎖された。 そしてその日のうちにエスタ軍が空から、陸から、ラクーンシティに向けて500人体制で救出と殺菌、原因解明に送り込まれた。 だがエスタ軍が乗り込んだ直後、ラクーンシティ側から妨害電波が出され軍人たちとの連絡が取れなくなり、その後数日待っても誰一人としてラクーンシティを脱出してくる者も、閉鎖口にやって来る者も現れなかった。 1週間後、エスタ国から民間傭兵組織STARSに、ラクーンシティの現状調査とウィルスサンプル持ち帰りの依頼が来た。 難易・危険度S級と思われるミッションにSTARSの精鋭の傭兵が集められ、空からラクーンシティに乗り込んだ。 しかし、ヘリがラクーンシティ上空に差し掛かったところで突如連絡が途絶え、その後何のアクションも連絡もないまま数日が過ぎた。 そこで更にSTARSが第2陣を送り込むことを決定した。 パーティメンバーは全員で5名、と送迎のためのヘリ操縦士。 1人目の傭兵、隊長キスティス 2人目の傭兵、アーヴァイン 3人目の傭兵、セルフィ 4人目の傭兵、クラウド 5人目の傭兵、セフィロス ガーデンを出てからの初めてのミッションが、500人の軍人が飲み込まれ、Sランク傭兵ですら成すすべなく消息を絶った、まさかのラクーンシティ。 今のところ致死率100%。 そんなミッションが既に始まっているというのに、送り込まれるヘリの中で自分の席から外れキスティスの隣に移動し、軍用機のプロペラの爆音にも負けないように大きな声で、ミッションとは関係のない事を必死に聞いている。 「ねえ!本当は生きてるよね!?ねえ!!ねえったら!!!」 ヘリに乗り込む前から同じ質問を繰り返している。 それどころではないのに、致死率100%なのだ、自分の命が終わるかもしれないのに、どんなに警戒しても足らないミッションなのに。 「何回答えたら気が済むの 彼は死んでしまった。 私は彼が死んでいく所を見てた。救おうとしたけど魔法で囲われた領域にいて干渉できなかった。 その場には彼もいたから知ってる。ちなみに彼はとっても耳が良いからどこにいても内緒話はできないと思って」 キスティスはヘリの向かい側に座っているセフィロスを指した。 セルフィは悔しそうに初めて会ったその男を睨んだが、セフィロスはただ腕を組み瞼を閉じたまま目的地に到着するのを待っている。 「聞かれたっていいもん!何も変な事言ってへんもん!おかしいのはそっちやんか!絶対おかしい! SeedからSTARSに切り替わるタイミングでスコールがいなくなったのも!一緒にガーデンから召喚獣達がいなくなったのもおかしい! 召喚獣ジャンクションしてへんのに魔法が使えるのもおかしい!アビリティもドローもできるのも変!何もかもがおかしい!! 何で!?こんな事今まで無かったやん!こんなんできるなら誰も悩んだりせーへんかった! 召喚獣の弊害があるから私ら記憶喪失になったし、悩んだし、バラムには召喚フロアができたし、召喚獣否定派のガルバディアと肯定派のバラムは仲が悪かった! ねえ!何かあったのは分かっとんねん!それ、スコールが関係してんねやろ?キスティ、知ってんねやろ!?何でハンチョ隠すん!?私別に喋って廻ったりせーへんから!教えてぇな! なんでスコールも召喚獣も姿消したん?ハンチョと召喚獣たちって一緒だよね?どこ行ったん?なんで私らまで隠すん?それってこの世界のバトルルールが変わった事と何か関係あんの!?あるよね?」 どれほど耳元で叫ぼうとも黙ったまま目をつぶっているキスティスにキレたセルフィは、真っ直ぐセフィロスを指さし更にボリュームを上げて怒鳴った。 「それに!!アイツ!スコールの最後を見たって何!! Seedでもガーデン生ですらない傭兵がスコールと組めるわけないやん!!そんなん他の誰よりもアンタが許さんやん!!! もー!!ケチケチせんと答えてぇな!!矛盾だらけやで、オバチャン!!」 最後の一言にクワッ!!とキスティスの目が見開かれてセルフィを射殺すように睨みつけた。 「聞こえとるやんけ!オネーチャン!はよ答えーや!でないともっと言うたるで!オバチャン!!オバン!!オバハン!!答えぇ!!」 セルフィも負けずに毛を逆立てた子猫の様にフーッ!フーッ!とキスティスに噛みつかんばかりだ。 「1歳しか違わない!」 「うっさいんじゃボケェ!そんなんどーでもええねん! こんなに怒鳴ってんのに聴こえへんて、どんだけ耳遠いねん!オバハン、補聴器でも買えや! はよ答えんともっと言うで!ババアキャラのキスティス!ババア!行き遅れんで!!」 毛を逆立てて怒っている子猫セルフィを、今にも喰い殺しそうな目で睨みつけている血統書付きロシアンブルー猫キスティス。 「……ミッション中は私語厳禁。いい加減にして」 「嘘つき!キスティスの嘘つき!ハンチョが死ぬわけない! ハンチョは誰が死んでも一人だけシレッと生き残る人なんやーー!!あの冷血フィギュア様は絶対に死なへんのやー! 嘘つき!ハンチョを返せ!!返せーーー!! 誰か本当の事おしえてぇ!教えてぇよーーー!!ハンチョーー!でてこーーーーーーい!!」 向かいの席に座っていたアーヴァインがキレたセルフィを見かねて元の席に戻そうと肩を抱いたが、セルフィはそれを振り払って更にキスティスを怒鳴りつけた。 「キスティ!私を騙せるなんて思わんとき! 自分!分かってへんだけでハンチョのこと大好きなんや!恋人みたいに!あんたぁハンチョが本当に本当に逝んでもーたら今頃こないなトコで仕事なんかしてへん! 召喚獣が全部一斉におらんくなった!召喚獣フェチのスコールも消えた! スコールとごっつい仲が悪くて有名だったセイレーンも消えた!イフリートも消えた! ゼルのことが大好きだったブラザーズも消えた!私のカーバンクルも消えた!や、私のじゃないけども! キスティのディアボロスも消えた!全部いっぺんに消えた! なのにキスティ平然としとる! 今までのキスティなら自分に関係ない事でも、分からないなら分からないなりに一緒に考えてくれた!どうしてなんだろう?って考えてくれた! けど今は違う! なんでそんな落ち着いてる!?なんでそんな知らんぷりする!? それはキスティがホントの事を知ってるからや!知ってて言えへんから黙ってんねや! ぜぇ~んぶ見え見え!見え透いとんで!ねえ、一人で抱えんでよ!どうせバレバレなんやから! はよハラ決めて言わんかい!!ババア!!」 キスティスは何かに耐えるように再び目を閉じ、ついに横を向いてしまった。 「セフィ…今はもう止めておこ?関係ない人が多いよ。迷惑だよ~」 実際にそこまでの違いはないが体格の差も相まって身長差が2倍くらいあるように見えるアーヴァインとセルフィ。 「関係なくない!見て、このメンバー!皆繋がってるやん! キスティスと私とアービン、それにスコールの遺言を聞いたとかいう!そこの!どっか知らん人!! それからキミ!君ってスコールのアリバイを作った人だよね! サイファーが脱獄した時にスコールのマンションに泊まってた人!君だよね! 召喚1回だけでガーデンぶっ壊したって人!しかも1日であの凄い訓練施設作ったったらしいな!なんなんソレ?どやったん?どうなってんの?ナニモン? ハンチョも最近じゃ人間離れして強かったし。ほら!みんな繋がってるやん!皆スコールの事、何か隠しとる!部外者なんて一人もおらん! ねえキミ!スコールは本当は生きてるよね!?キミは知ってるよね!?嫌なんよ、このボヤッとした変な事だらけの何もかもが違う状態!教えて!お願い!お願い!生きてるよね!?あの冷血フィギュア様は人類が絶滅しても、シレ~っと生きてる人なんやから!だから!生きてるよね!?ね!?」 どんなに精一杯叫んでも、ヘリが煩く隙無くそのか細い声を爆音でかき消して行く。 「ねえ!生きてるもんね!?報道は嘘やんね!?ねえ!!嘘やん!?答えぇや!!難しい事なん聞いてへんやろ!!うん、てゆえばええねん!言わなくても頷いてくれたらええんや!ねえ!!」 繰り返すセルフィは、答えない限り絡み続けたるで!とクラウドを睨みつけている。 「聞くが、アンタそんな精神状態で今からのミッションをこなせるのか? 足を引っ張られるのは御免だ」 クラウドは正面切って睨んでくる女の子の目を見ることができず、興味無さそうに明後日の方向を向いて答えた。 迷子の迷子の子猫が精一杯の威嚇をしてくるその姿が、大破した飛空艇にライオンハートだけが残されていたのを見つけたあの時のことを思い出させた。 これは違う、こんなのは違う、心は否定していても目に入ってくる情報が否定しようとする心を否定し、混乱するばかりだった。 今、目の前の女の子がどれほどの思いでいるのか分かるだけに、もうこれ以上は止めてくれと、話を逸らそうとした。 だが…… 「意地悪!!」 とうとうセルフィは席に戻り膝を抱え俯き、声に出さず泣き始めた。 何もかもが剥き出しの鉄だらけの軍用ヘリ、稼働爆音が鳴り続ける中でその華奢で小さな女の子が膝を抱えて蹲ると、本当に震える子猫のように小さく弱々しく見えてしまい、クラウドは罪悪感でいたたまれなくなった。 隣にいたセフィロスがクラウドを慰めるように肩をポンッと叩こうとしたが、その前にビシッ!と手痛く当人によって振り払われた。 「セフィ…本当に大丈夫?ヘリは出ちゃったからもうミッションは始まってるよ? ねえ、考えるのは後、帰ってからにしようよぉ」 きっとプライベートでは優しい彼氏なのだろう。 スナイパー、アヴァインが小さくなっている彼女を悲しむように慰めている。 セルフィは泣き止まず俯き膝を抱え続けている。 だがヘリの爆音と振動が、子猫の幼さ可憐さを粉砕掻き消していく。 これから500人の軍人とSTARS精鋭を飲み込んだバイオ汚染された町に入り、得体の知れぬ敵に戦いを挑むのだ。 そんな可憐さはただのお荷物、戦いを前にした傭兵の世界ではそれだけは確かな事だった。 隊長キスティスがアクションで隊員全員にマイク付きヘッドホンを装着するように指示を出し、セルフィの存在を無視するように話し始めた。 「今回のミッションの詳細を説明します ラクーンシティはエスタ国が世界中の優秀な化学者とその家族を隔離した町です 隔離と言っても全ては本人たちの意思 研究開発する為のベストな環境を創り、プライベートも治安保全環境整備を徹底的に管理した、化学者達の為の町 以前エスタが鎖国をし、その存在すら世界から隠していたあの反射壁でラクーンの街全体を覆い、出入り口は東西南北に各1か所のみ、今はその4か所も全て閉鎖されていますが、稼働時は事前発行されたIDカードを使ってしか出入りできないし、そこでラクーン住民の人口だけでなく全ての物流も管理されていました 今回のバイオ汚染について時系列で報告します 15日前、ラクーンシティからSOSが入る 20日前から殺人事件がが頻発している、通報が遅れた原因は新種バイオ汚染の可能性が強かったから。科学者間での意見の対立と研究を優先させたため 通報翌15日前にラクーンの全ゲートを封鎖 14日前にエスタ国内のSAT400名が解決に向かった しかしSATがラクーンシティに入ったきり、妨害電波により連絡が途絶え、誰一人として帰って来ない 8日前にエスタSAT第2陣100名が向かったが、同じく消息が途絶える 5日前私達無国籍傭兵組織STARSに治安保全及び原因究明の依頼が来た 翌4日前にSTARS第一陣ブラヴォチームが向かった 突撃は入口からではなく、ラクーン反射壁の上空一部を破壊しヘリで入る事にした 工作部隊が上空壁を事前に壊し撤収、その後戦闘部隊ブラヴォチームがラクーンシティに入った しかし彼らと連絡がついたのはそこまで、その後ヘリごと消息を絶ち、今現在何も報告は無い そして今回我々STARS第二陣FFチームが向かう事となった 我々チームは元はスコールが隊長だったが、亡くなったため私が代行している スコールの抜けた穴はスコールの個人的知り合いに入ってもらった 銀髪の彼がコードネーム・セフィロス。金髪の彼がコードネーム・クラウド 彼らの身元については私も知らないので聞かれても答えられない 我々と組むのは今回限りの予定 スコールからの伝言で戦闘能力はスコールよりも上。傭兵として信頼できる そしてこちらの女性がセルフィ、男性がアーヴァイン。私とこの人たちはガーデン出身の元Seedです 得意とする武器は私は鞭全般、セルフィはヌンチャク全般、アーヴァインは銃全般 クラウドの得意武器は斬馬刀、でしたよね?今回は持ってきていないようですが。セフィロスさんは…それは刀でいいんですか?」 「そうだ」 腕を組み目を閉じたまま一言。 「剣は本当に種類が豊富ですね。クラウドの斬馬刀もあればスコールのガンブレードみたいのもあるし」 「ガンブレードは剣ではない」 セフィロスが薄く目を開けてキスティスを睨みつけた。 「失礼しました」 セフィロス琴線を弾いてしまったらしい事を察したキスティスは即、謝った。 これからバイオ汚染真っ只中のラクーンシティに入るというのに、キスティスは既に疲労困憊していた。 ”もう本当にいい加減にしてよ!セルフィに詰められるし!アーヴァインは言いはしなくても私の反応を探ってるし!私凄く困ってるんですけど!?少しくらいフォローしてくれてもいいんじゃないの!?別に期待してなかったけど!前回の時も思ったけど、セフィロスさん極端すぎ! 私がこんなに困っるのに置物みたいに我関せずで、クラウドがほんの少し言われた途端に”良い子、良い子”で慰めるとか…ホント、アタマどうかしてるわ!その露骨さ!少しは恥ずかしいと思いなさいよ!思ってないから延々同じことを繰り返して、挙句クラウドに嫌われて!ザマーミロ!もっと嫌われちゃえ!大人の男がアタマを撫でられて喜ぶわけないでしょ!セットが崩れて迷惑なだけよ!クラウドはセットとは無縁でしょうけど!嫌われちゃえ!あ、もう散々嫌われてるから、もっと嫌われちゃえ!毛虫の如く嫌われたらいいんだわ! …という心の声を表面に一切出さずに、誰にも気付かれないまま、怒りをしまっていた。 「斬馬刀って?どうして今回は持ってきてないの?僕、剣は専門外だけど、見る分には本当に楽しいんだよね~、色々あって」 アーヴァインが軽く口をはさんだ。 が、クラウドはそれに対し何も反応しなかったので、可愛そうなアーヴァインの言葉はヘリコプターの爆音に消されるだけとなった。 どこまでも空気が冷ややかになっていくチーム。 キスティスは溜息をついた。 「斬馬刀は物凄く大きいの。だから今回の様なグループで活動するミッションにはあまり向かないの で、ラクーンシティに着いてからの話だけれど 通信が絶たれるのはラクーンシティ側から妨害電波が出ているから エスタの鎖国時代の名残でラクーン全体がミラー壁で囲われいる上にそうして妨害電波が出ているので今は町全体が完全に孤立した状態 つまり殺人事件が起き始めたとされる20日前から町の中が一切の未解明であるのが現状 ただエスタSATの事前解析によれば、殺人事件ではなく、食人事件の可能性が濃厚 バイオ感染した者による食人行為、そしてそれによって感染した者による更なる食人 被害者が加害者になってゆき、ネズミ算的に感染が加速していく 警戒するべきは、それら事前知識を以ってラクーンへ乗り込んだエスタSAT合計500名、STARSの6名とも消息を絶った よって我々が到着したら先ずする事は町の状態の把握、妨害電波の発信元特定 今、私達が着ているこのエスタの防護服は化学汚染防護の役目も果たしているので、着いたら例のマスクも着用する事 あのマスクを被ると誰が誰とかは…まあ、体形で分かるけれど一応我々全員胸の所の切り替えの色が青になってる」 キスティスはそれぞれの切り替え部分を指さして 「青以外のカラーのエスタ兵がいたらブラヴォチームです SATは全員SAT支給の防護服を着ています。グレーの軍服スタイルです それと前もって渡しておいた携帯に町全体の地図が入って...」 突然乗っていたヘリの操縦席側でバアンッ!とガラスの割れる音がし、操縦席から血が四方に飛び散り、機体が急降下を始めた。 思わず操縦席をキスティスが確認しようとするとセフィロスが言った。 「動力をやられた。操縦士は放っておけ。カウントダウン5で一斉に飛び降りろ。降りた後はできるだけ機体から離れろ。装備確認!・・5・・4・・3・・」 セフィロスがカウントダウンを始めると全員が無言のままマスク、武器、アイテムを装備し始め、キスティスが右ドア、アーヴァインが左ドアを開けた。 「・・1・・0!」 飛び降りながらどこかに爆発から隠れられる場所を探したが、走って辿り着けそうな場所には何も無く、幸か不幸か近くに先に墜落し炎上したと思われるSTARSブラヴォチームのヘリの残骸があった。 全員でヘリ残骸に向かって全力疾走し始めたところで背後へ乗ってきたヘリが墜落し、プロペラがガガガガッ!と草原を堀り上げながら傾き止まり、全員がヘリ残骸に隠れたところ大爆発が起きた。 幾つかの部品がヘリ残骸にバァン!とかカン、キンッ!など音を立てながら当たった。 全員がまだ次の誘爆を警戒して隠れている時、複数の犬たちの威嚇する唸り声がサラウンドで聴こえてきた。 ヘリの炎上で明るくなった周囲を見渡すと…一面の草原。 その草原の所々から黒い塊がこちらに向かって唸りながら動いている。 数は20匹以上、徐々に間合いを詰めて来ている。 2次爆発した炎で更に明るく照らし出された黒い塊の正体は、野良犬らしきモノ達…何故かどれも酷い怪我を負っている……というよりも片足が捥がれたままの状態だったり、首が折れ骨が突き出ていたり、体の多くを食いちぎられ腸が出たままの状態だったり、どう見ても生きていないはずのものが大半を占めている。 「あ……」 キスティスがすぐ横に草に埋もれるようにいたエスタ兵防護服をビリビリに破られ、貪り食い散らかされた死体を発見した。 突然一番近くにいた犬がガウッ!と襲い掛かって来、それをきっかけに他の犬たちも一斉に飛びかかってきた。 全員がそれぞれに武器を持ち応戦したが、犬たちの攻撃性と生命力は異常に高く、何度斬りつけても、何度打ち付けても、撃っても立ち上がり襲ってきた。 どう見ても死んで、しかも腐敗までしているが、野良犬たちは剥き出しの敵意を向けて、ダメージを与えても与えても襲い掛かって来る。 「キスティ!あの洋館!!明かりついてる!車も止まってる!人がいはるはずや!!」 セルフィが草原から一番近い大きな洋館を指した。 予定していた市街地よりもカナリ手前に墜落したので、ショップや施設のある場所からは遠すぎたが、このままでは市街地に着くより先に犬に喰われてしまう。 「皆!仕留めなくていい!洋館にダッシュ!」 キスティスは鞭を振るいながら洋館に全力で走り始めた。 それを合図に全員が洋館に向けて走り出し、最後尾をクラウドとセフィロスがディフェンスしながら走った。 幸い洋館には鍵がかかっておらず、難なく入る事が出来た。 だがその洋館の広いロビーは豪華なシャンデリアに明かりが煌々とついているにもかかわらず、何度声をかけてもホールに響くだけで返事は無く、人が出てくる気配も無かった。 玄関ホールは1・2階が吹き抜けになっており、1階部分左右に扉があり、ホールから続く奥にはペルシャ織の赤絨毯が敷かれた大階段が2階に向かい、途中で踊り場があり、そこから左右に分かれ2階左右の扉にロフト状態で続いている。 「誰もいないのかしら?」 「……いる。音がする」 キスティスの呟きにクラウドが答え、ホール左側のドアを見ている。 「?音?」 クラウドが左側の扉に向かいながら「向こうの様子見てくる とりあえず玄関は施錠しておいた方がいいんじゃないか?」 「単独行動は原則禁止!私も一緒に行く! 皆、私たちが行ってる間ここのロビーを探索しておいて!それと玄関の施錠!」 キスティスがクラウドの背を追いかけ始めたところ、パァーーン!と、銃声がクラウドが向かっている左側ドアから響いた。 キスティスとクラウドはドアに走り、それを見送った3人。 「…アービン。さっき”音が聞こえる”ゆうたはったけど、何か聴こえた?」 セルフィの問いにアーヴァインは言葉にせず、全然!という表情をした。 一方、セフィロスは玄関の施錠が済むと、右側のドアのチェックに向かっていた。 それをセルフィとアーヴァインが追いかけた。 「セフィロスさん、耳が良いって召喚獣のアビリティ?それとも訓練で能力を上げるの?私ら全然聞こえませんでしたけど」 「お前達には無理だ」 一刀両断セフィロス。 嘘は言っていない。先ずはジェノヴァ細胞を埋め込み、魔晄漬けでアレコレ加工し、ソルジャー体質にし、その後の訓練でジェノヴァ細胞の活性化に応じて能力が上がっていくのだ。 だがそういう(言えない)事を一足飛びにいきなりファイナルアンサー『お前達には無理』 案の定、セルフィとアーヴァインはセフィロスの後ろで「ファック!」のアクションしていた。 一方クラウドとキスティス。 扉の向こう側には、50席分くらいの大きなダイニングルームが広がっていた。 長テーブルの上には凝った造りの燭台が10台ほど規則正しく並べられ、床は白と黒のチェックに配色されたタイル。 2階部分とはロフト状態で繋がっており、入ったドアの反対側には造り付けの大きな暖炉、その右側に別のドアがある。 「向こうから聞こえた?」と奥のドアに向かいながら先を歩いたキスティスが振り向くと、クラウドが立止まったまま2階ロフト部分を見上げていた。 釣られてキスティスも見上げ、無意識に「ヒッ!」と喋りながら息を吸い込む変な声が出た。 ロフトは幅の狭い通路の様になっていて、そこでは死体が。。ユラユラと歩いていた。 ”死体”としか言い様がない。 皮膚がドロドロに崩れているもの、腐敗して風船のように膨らんでいるもの、腹が抉れて無くなって折れたアバラや背骨が見えているもの、顔の肉が無くなって歯が剥き出しになっているもの。 紛れもなく死体だが、動いている。 「全部で9体」 クラウドが呟いた。 キスティスは絶句したまま凍り付いたように動けなくなってしまった。 「ところでさっきの犬、アレ…どう見ても死んでたよね。めっちゃ狂暴だったけど」 右側のドアの部屋の探索に向かったセフィロス達。 部屋の中央には大きな女神の石像があり、床はやはり白と黒のチェック配色になっていた。 「死んでたね…見た目は。ビックリの攻撃性だった。撃っても撃っても襲ってきた。頭吹き飛ばしてようやく止まった」 青褪めつつアーヴァインが答えた。 「今までもゾンビ系のモンスターいたけどさ…明らか違うよね。本気で死んでるやんアレ。めっちゃクッサくて鼻モゲそうやった!」 「予想通りバイオ汚染が蔓延しているということだ この館に来る途中で見た道路を徘徊していた人間もゾンビ状態だった」 セフィロスが部屋の中を探索しながら答えた。 「人間!?そんなのいました!?」 アーヴァインが聞き返し、セルフィに目で問いかけるとセルフィも首を振った。 「北西2ブロック先、路上に3人、ショップの中に2人、東50m先付近に4人。全員ゾンビ状態だった 草原の犬も全てゾンビだった事から、この町全体が既に汚染完了した状態だと認識した方が良い」 そんな先までは爆発炎上の灯は届いていなかった。 絶句するセルフィとアーヴァインだったが…… 「ヤバイ!キスティスに教えとかないと!…あ、そうやった、トランシーバー!」 キスティスに連絡を取ろうとトランシーバーを取り出したセルフィに、部屋にあった脚立を移動させながらセフィロスが言った。 「必要ない、クラウドも見ている」 「えぇ!?」 セルフィとアーヴァインは、得体のしれない2人の能力を警戒し始めた。 |