君のもとへ3 クラウドの様子がおかしい。 何か深刻な悩みを抱えたらしいのは確かだが、それが何なのかは決して言おうとしない。 言わないくせにいつまで経っても悩んで、ふとした拍子に泣きそうな顔をしている。 クラウドが悩むなら原因はパン屋以外にはないはずだ。 まだ対人恐怖症を引きずっているクラウドは人の多い場所は避けて真っすぐ出勤、真っすぐ帰宅、俺と会う日以外は家かパン屋かどちらかに居る。 母親と2人の生活で今更問題が起こるとは思えないから、悩みは客商売の店の方だ。 だからパンを買う体(てい)で探りに行ったが、どうも店の奴らにも心当たりがないらしく皆困惑していた。 役に立たねぇなぁ…こいつら。 普段無駄に守って甘やかしてんだから、お前らは気づいとけよ! しかももっと最悪なのが、俺が予告なしで来た事を怒ったクラウドが店への出禁を宣言してくれやがった。 「来るな!今度店に来たらもう会わない!」とか。 何の脅迫だよ、意味ワカンネんだけど?テメーんトコは客商売だろうが!俺はパン買いに行っただけですけど? お前に声かけようにも奥に引っ込んだまま出てこねーしよ!ティファちゃんは目が笑ってないくせに異様に笑顔で話しかけてきてクソ邪魔だったし! お前の『可愛いパン屋さん』姿も見たかったのに何で隠れるんだよ!恋人が一生懸命働く姿を見れるなんてメッチャご褒美だろうがよ!ミッドガルにいる間のネタにすっから出て来いっての!前にパン屋の格好のお前とヤりてーつったらぶっ飛ばされたからな!せめてズリネタくらいは協力しろっての! 1回で終わるはずだった関係が、何故か相性がミラクルファイヤーしちまって、帰る時には次に会う約束をしてた。 アー、しくじった…と2回目で終わらせるつもりだったが、その次もエキサイティングカーニバルしっちまって、その次の約束をしててその次もまたゴートゥヘブンしちまって…で、完全にハマった。 駄目だ…俺。下半身アホ過ぎる。 クラウドが俺にハマるのは当然としても、俺があのアホのビビリん坊にハマっちまってるのは駄目過ぎだろ。血迷いすぎ。ありえねぇ。 確かにセックスはスゲー。やべーくらいスーパーミラクル相性良い。ヤバイ。 だが毎回俺が会いに来てるとか、何事だよマジで。どうかしてるぜ俺。 休日全部グラスランドに来ていて回数を数えるのももう馬鹿らしい。……アホだ、我ながら。 美人な女もグラマラスな娘も、上手く恋心を煽ってくれる女も、セックスが巧い女も、相性がいい女もいくらだってミッドガルにいる。相手には困ってねぇんだ。 なのに、いくら美人でアホ可愛くて相性最高とはいえ、男のケツ目当てに6時間もタイムロスしてグラスランドくんだりまで来てるとか……しかもそのケツの持ち主は会う度に不機嫌度が上がってる。マジで態度悪い!とてもじゃないが恋人なんて空気じゃない。 もう自分でも分からねぇよ、なんで毎回俺が来てんだ。って、それはクラウドが”そっちに行く時間も金もない!”とほざくからデス。 まあ、その通りだろうよ。 だから俺が来なきゃ間違いなく、この関係が切れる。 だからこそこの俺が!てめぇより忙しくて、女にゃ困ってねぇこの俺が!遠路遥々会いに来てやってんだ! なのに何でお前はそう態度が悪いんだ!感謝のかの字もねえ!むしろ”来るな”的空気が右肩上がりなんすけど!? どうなってんだ、コレ!納得いかねぇぞ!クラウド! パン屋を出禁にされてから3週間後、久しぶりに会えたっつーのに今日はもう最初から絶望的に機嫌が悪かった。 会って直ぐに帰りたそうにしているし、俺を見ようともしねぇし、ずっと泣きそうだわ辛そうだわ、一体何なんだっつーの。 「どうした?何があった?」 なんとか聞き出して助けてやろうとしてんのに「別に」で一方的に話終わらせて目も合わせない。そのくせグズグズと鬱陶しい不機嫌が続く。 ハッキリ言って可愛い度マイナス100点だ。 こっちは3週間ぶりのたった1日の休みをお前に会うためだけに長距離かっ飛ばして来てんだぜ?分かってねえだろ、その大変さを!暇じゃねぇんだぞ俺は!帰ったら後回しにしまくったデスクワーク山盛り待ってんだぞ!てめぇ、このまま攫って帰るぞ!やらねぇけどよ!チキンなお前のために! クソイラつきながらキスをしようとしたら「したくない!」ときたもんだ。そりゃキレる!仕方ねぇよな、お前の取柄なんかセックス以外に何もねえもんな! も~~う笑って許せる限界超えた!てめぇ、何様のつもりだ!勘違いしてんじゃねぇ!と「犯す!」と宣言し、レイプシチュエーションでセックスに持ち込んだ。 …言うまでもなくプレイだ。 元ヒキコモリで対人恐怖症で恋愛初心者のチキンハートにはできればそういう設定は使いたくなかったが、こいつのグダグダに付き合ってるとどれだけ時間があっても意味がない。 日帰りは本当に時間が無い。ヤる事ヤっておかなきゃ3週間ぶりの休日が丸ごと無駄になる。 だが初レイプシチュエーションに、小動物みたいにプルプル震えて縮こまって完全無抵抗で半泣きになってるクラウドは予想外に、もう本当にヤベー超絶可愛すぎた。 言ったら何だが、正直…お前がヒキコモリになったのも頷ける。 とにかく可愛い。ビビる姿がエンジェル可愛い。 超絶可愛過ぎて激萌え過ぎて、言葉で攻めて、理性がぶっ飛んだ。 犯っちまった……愉しく。 まだビギナーの域を出ないクラウドにはカナリハードなプレイなのは分かってたが、うっかりガン掘りで失神させてしまった。 クラウド、勃ってなかった。 ……マズイ。 確実にヤバイ…。 とりあえず目を覚ましたら謝る。謝って謝り倒してメロンメロンに優しくして甘やかして時間ギリギリまでイチャイチャしながらご機嫌取って、何があったのか聞き出す。 本当に追い詰められてるっぽいからな。そこだけは押さえておかないと、次に来る時までクラウドがもつか怪しい。 落ちたままのクラウドの真っ白な肌に指を滑らせて改めて気が付いた。 痩せた。つーかやつれてる。 優しくするつもりだったのに…怯えて…涙の痕………これはダメだ…大失敗だ。 盛り上がったが、後味が悪い。 なあ、本当に何を悩んでんだ。何があったんだよ。一人で悩むなよ。言ってくれよ。 俺、お前と楽むために来てんだよ!楽しもうぜ?2人で。 そりゃー最初はただの通りすがりのつもりだったが、ここまで関わっちまった以上はそれなりに責任はもつつもりだ。 だから早く目を覚ませ。 暴走しちまった事を土下座して謝って、滅茶苦茶優しくする。 イチャイチャしようぜ。微笑った顔を見せてくれよ。 ……ん?そういや、俺、お前の笑った顔見たことない…よな? まあ、元々ニコニコするタイプじゃねぇけど…付き合って半年、会ったのは…20回弱。 1回も見たことねぇ、かも…? 薄い唇に指を這わせ、少し口端を押し上げてみた。 …やっぱ見た事ねぇな。 てか完全に落ちてる…反応しない。 首筋の薄い皮膚を翌朝には消えている程度に軽く吸ってみた。 お前の身体は本当、どこもかしこも甘く誘う。 これだけのエッチな身体、誰かに見られたら絶対に襲われる。 しかも本人は隙だらけのアホ。 お前がそんなんだから俺が無理をしてでもこっちに来るハメになるんだ。 全然分かってねぇよな、クラちゃん、コラ! 痩せて浮き出た鎖骨の上を軽く吸ってみた。 こんなエロエロボディでチャーミングプリティエンジェルフェイスなのにキスすら未経験の童貞処女だったってんだから、マジ引き籠り万歳。神様サンキュー! 薄ピンク色の可愛い乳首を舌で転がし弄んで、強く吸ってみる。ここは脱がない限り人に見られる場所じゃねぇからいいよな。 脱いだらバレるけどな。 乳首から降りて腹筋辺りを噛んで強く吸う。 この紅い花びらは当分は消えない。 風呂入る度に俺を思い出してくれな。 落ちていたクラウドが気付き微かに身じろいだ。 よっしゃ!3回戦目始めるぜー! 小さくて薄い唇を舐めて湿らせ口腔へ舌を進入させ、舌を絡めとり、あぁぁ舌がトロットロだ。お前本当に喰っちまいてぇ。ブラボー!エクセレント!デリーシャス!チクショー!持って帰りてえ!! 「やめろ」 下から腕で押し返して……あ、ヤベ。ウッカリまたヤっちまうとこだった。 「さっきはごめん!今日はもう突っ込まねぇから…」 イチャイチャしようと抱いてキスをしようとしたら顔を背けられた。あ、ショック…。 「お、おい!まだ歩けねぇだろ!」 クラウドは俺を押し退け、答えも振り向きもせずに、ヨタりへたりながらベッドや壁伝いにバスルームに入っていった。 マジギレてる…。ヤベェ、本気で謝らないと…。 でもさっきのはプレイだったの分かってたよな?ちょっと、確かにハードだったが手順はちゃんと踏んだし、あ……ゴム付け忘れちまったけど、中出ししちまったけど…怪我はしてねえだろ?な?本気じゃなかったって分かってるよな?…本気だったけど。 ガラス張りのバスルームはクラウドが中で何をやっているのか全部見える。 マズイ、あれは帰る気だ。まだマトモに立てないのに。ヤベエ…ガチギレてる。 いや、ちょっと話し合おうぜ? 「クラちゃん、ごめんて!すいませんでした!」 ガラス張りバスルームで床に座り込んでまで体を洗ってるクラウドからの返事は無い。 「なぁ、今日はもうしないから~、反省してるから!ちょっとノリ過ぎました!許して下さい!スゲー反省してるから!」 シャワーで全部きれいに流したクラウドはやっぱりフラフラになりながらバスタオルを被って壁伝いにヨロヨロになって出てきた。 ヤベエ!本気で帰っちまう!マズイ!マズイ! 「だっ!何なんだっつーの!文句あるなら言えよ! 何か怒ってんだろ!?だったらそう言えよ!”察して”とか女クセェ事すんな! さっきのそんなに嫌だったか?だったらもうしねーから!一方的過ぎたよな!?ごめん、て!反省してます!あんまりお前が可愛い反応するから……!だ、だから!ちょ、待てって!何で!?そんな何で帰ろうとしてんの!?俺らまだ何も話してねぇだろ!な?頭来たなら話し合おうぜ!?怒っていいから!特別サービスで殴ってもいい!だが帰るのはナシだ!帰ったらそれで終わっちまうだろ!話し合おうぜ!なあ!クラウド!」 バスタオルで拭いてはいても、まだ髪も肌も乾いてもいないのに床に散らばった服を回収しながら身に着けている。 や、マジで勘弁。帰るなって……参ったな…。 「終わりだ。俺ら」 「へ!?え!?」 何て!?今そんな話じゃねえだろうが!何言ってんだお前!! 「お前、俺からパンの匂いがするっていつも言うよな」 「は!?何の話!?何?それが気に入らないの!?あ、だったら言わねえよ!?言わない!それとさっきはごめん!な?仲直りしようぜ!?」 クラウドは服を身につけていくのを止めない。指先がまだ小さく震えていてボタンがうまく止められないのに、震えながらも帰り支度を止めずにこっちを見もせずに、淡々と作業を進めていく。 「なあ!クラウド、話し…」 「俺も、いつもお前から匂ってた 誰かの匂い 今日も、この前も、その前も……最初の…あの喧嘩の時からずっと、ずっと、ずっと… お前はいつも誰かの匂いをさせてくる。気のせいじゃない お前、今も俺以外にも…たくさん……相手いるだろ」 「え?…あ………いや……え?…と………匂わねぇ、だろ……?」 何言ってんのクラちゃん、俺、ちゃんと風呂入ってるし…匂うわけねぇ……あ、時々痕付ける女はいるけど……でも……え?あの、そんな、全部セフレだし!ここ何か月か固定はクラちゃんだけだし!てか、違うって!最初はお前と続けるつもりが無かったんだって!だから他と寝てても別に浮気とかじゃねぇよ!……とは言えねえ…。 いや、だから遠距離はやっぱり不便なんだ。ヤりたくてもお前がいねぇんだから仕方ねぇだろ。その場凌ぎの相手が必要だろ。俺、寂しん坊だし、一人で寝るのあんま得意じゃねぇんだ。な?本当、浮気なんかじゃないぜ?とも言えねえし!アオッ!どう言ったらいいんだ!! 「そういうのがお前の付き合い方なんだろうけど、俺には無理だ もう会わない」 待て!待て!違うって!そんなファイナルアンサーを突然出すんじゃねえ! 「そ、そんな怒んなって…お前が嫌なら他全部切る!」 まだ震えてマトモに力も入らないからズボンも座って穿いてる。 「ま、待てって!待ってくれ!クラウド!話し合おう!な!?とりあえず!まだ立っていられないだろ!とにかく休め!こっち来い!」 酷く痛々しい顔で俺を睨んでいる。やめてくれ、本当に別れちまいそうな顔するな!止めてくれ……頼む。止めてくれ…。 「俺が嫌なら他を切る? ソレ、そのうち俺がその切られる側になるんだろ。簡単に」 立つこともマトモにできないはずのクラウドがフラフラと壁伝いに出て行く。 「どこかで遭ったとしてももう話しかけるな」 一昨日、女と寝ていた。 いつも通りその場だけの使い捨ての睦言をたくさん言った。盛り上げるために。 お前の言う通りだ。言い訳はできない。 でも…… だって仕方ないじゃないか…… 恋なんてそんなもんだろ。 一人に絞って無防備に本気になって、挙句そいつに捨てられたらどうなる。俺はどうなる。 だから保険は必要だ。 現にお前だって俺を切り捨てたじゃねぇか。 もし俺が本当にお前だけだったら、お前に本気だったら、俺きっと今の言葉で死んでたぜ? だから保険が必要なんだ。 だから…俺は間違ってない。 オッケー、危機回避! お前一人に絞らなかった俺は間違ってなかった! けど…… 死にそう… 駄目だ…死ぬかも…。 死ぬ…。 こんなはずじゃなかった…。 ……お前を傷つけてあんなに悩ませてたのは、まさかの俺…? お前の敵、俺だったの……? 勘弁してくれ こんな答えマジでいらねえ。 やめてくれ。 最悪。 バレなきゃいいと思ってた。バレてもその時は何とかなると思ってた。 お前は世間知らずのアホだから何とでも誤魔化せると思ってた…。 お前は俺だけ見てりゃいいんだよ。俺が守ってやるから。 だが俺を守る奴はいねぇ。だから保険が必要だったんだよ。 でもまさか最初からバレてたとか……どんな嗅覚だよ……その尖がった髪の毛はアンテナかよ。ゲゲゲの鬼太郎かよ……。 ……違うよな、現実逃避したってマジでアウトなのは変わらねぇ……。 嘘だと言ってくれ。 嫌だ。こんな終わりは嫌だ。 終わりたくない。 クラちゃんが怒った。 …俺、嫌われた…。 あんなに傷ついた顔して……。 俺が犯人だった…。 ……死ぬ…。 3日後、ティファちゃんが俺に会いたがっているとルード伝いで聞いた。 なんだよルード、あの子の事諦めてなかったのか。ちゃっかりツナギ作りがって。 サスガ相棒、クソ打たれ強くてしつけー体質はやっぱ変わんねーな。 しかしティファちゃん、待ち合わせの場所が何で人気(ひとけ)の無いただの高架下なんだ。待ち合わせでこんな場所指定した子初めてだぜ。 昔、グレてた頃はよくこんな場所で命がけの喧嘩したもんだ。 懐かしいぜ…。 「レノさん、最近ウチの店来ないけどお元気でした?」 「あー、うん。…そっちに行ってないからね」 クラウドに出禁喰らってるんすよ。ついこの前はクラウドへの出禁も喰らいました。 営業スマイルが眩しいティファちゃん。 その笑顔、どう見ても腹に一物あるね。 「そう?3日前あなたがグラスランドのラブホテルから出てくる所を見たと思ったんだけど気のせい?」 笑顔のままで続いた言葉がさっきより2オクターブくらい低い。 今すぐ殺人でも犯しそうな眼をしてる。 きっとパン屋じゃ永遠に知る事は無いだろう隠していた裏の顔。 やっぱな、この子から感じた鬼は生きてた。 で……何故今隠していた鬼を俺に見せる? 「言っておくけど偶然じゃないわ クラウドの様子があまりにもおかしいからあの日、後を付けたの そしたら一人でラブホテルに入っていくじゃない。目を疑ったわ でも2時間しないうちにまた一人で出てきた。フラフラになって 髪も濡れて、直ぐ脇の壁と塀の狭い隙間に入っていったから覗いたら、蹲って泣いてた 助けてあげたかったけどクラウドをそんな目に合わせてる犯人を特定したかったからそのまま離れて見張ってた 何人あのホテルから出てこようとも、犯人を見れば私は必ず分かる だってクラウドの知り合いは全部私も知ってるもの でも私が知ってる中にクラウドを泣かせるような人なんて想像つかなかった。 誰が出てくるのか凄く怖かった。 そして出てきたのは、強引にクラウドに近づいたレノさん、あなた どういう事か説明して」 この殺意丸出しの眼を見れば、どんな言い訳も通用しないのは分かる。 引き籠りの人間不信だったクラウドを今の状態まで回復させたのはこの子だ。 あの頑なな性格のクラウドに心を開かせるには長い時間が必要だっただろう。 その関係が恋愛じゃなくてもクラウドへの深い愛情が無ければできなかったはずだ。 そんな愛情の前に俺にできる言い訳なんか何も無い。 「その沈黙、高くつくわよ」 極寒地吹雪が音を立てて駆け抜けた。 ティファちゃんがえらく使い込んだ感のあるカイザーナックルを手慣れた仕草で指に装着……え…ナックル!?え、あ、まさか…クラウドにあの危なっかしい体術を教えたのは………え、いやいや、待てって!そのナックル何に使うつもりだよ!? 獣の様に髪を逆立てんばかりの殺意で俺を睨みつけてくるのはパン屋の可愛い女の子じゃなく…鬼人殺人兵器…。 あぁ、なるほど、人気のない高架下ってのは、最初からそのつもりで来てたんだな。この女……。 そうですか……これがバッドエンドってやつデスか……。 クラちゃん、リセットボタンはどこですか。 ……教えてください。 最初からやり直したいです……。 俺が間違ってた。 馬鹿なのは俺だった。 ごめん。クラウド。 これがゲームならさ……何回でもやり直しができるんだ。「正解」になるまで何度でも…やり直せる。 クラウド、別れたくない。 嫌だ。 終わりにしないでくれ。 お願いだ。 俺を 捨てないでくれ……。 数日後、クラウド幼馴染ヴィンセントが店にパンを買いに来た。 「あらぁ!ヴィンセントくん、お久しぶりー!」 「…」 傾国の美形でありながら暗黒世界を背負い続ける男、その無口っぷりは相変わらずだ。手を軽く上げたのが挨拶の返事だ。 実はヴィンセントはティファから”クラウドが精神的に危ない”と聞き、心配してやってきた。 「あ、ザックスさんはヴィンセントくんは初めてでしたっけ?クラウドの幼馴染なのよ。お互い覚えてないんですけど」 同じくザックスも「休日だから~」とパン屋を手伝いに来ていたが、実は妻エアリスからクラウドが危険な状態にあると聞き、心配してやってきていた。 「おかーさん!お互いに覚えてなきゃ”幼馴染”じゃないっすよ。そもそも馴染んでないんですから!そういうのは”元同級生”っつーうんすよ!」 「あ、そうね!もー!ヴィンセントくん知ってたんでしょ!?言ってよー!もー!」 「……」 この母から何故あんな繊細な子が生産されたんだろう?というくらい従業員間に漂うクラウドを按ずる空気を読めていない母は、珍しい訪問者が2人も揃った事を単純に喜びケラケラ笑っている。 もっともこんな母だからこそクラウドがここまでやってこれたのかもしれない。 親子でドンヨリしてしまったらきっとクラウドは思い詰めてティファに会う以前に未来を失くしてしまっていたのかもしれない。 一方厨房の方ではクラウドはゲッソリと弱々しく憔悴していながらも、何もかもを振り切るように一心不乱黙々と憑りつかれた様に作業をしている。 同じ厨房に入っているザンガンも声をかけられずにいる。 そんな重い空気の中、店頭の母はヴィンセント向きの素敵なニュースを伝えた。 「ヴィンセントくん、ウチのお店ここのところお宅の会社に縁が深いのよ~。この前…1か月、か2か月前くらい前かしら?おたくの社長のSPさんもウチのパンを気に入ってくれて、こっちに出張の度に買いに通って下さってたのよ。凄いでしょー!…最近はいらっしゃらないけど、社長さんこっちに用事は無いの?」 「社長のSPなら入れ替わった」 「え、そうなの?赤髪のSPさん」 「もういない」 「あらぁ…まぁ…じゃああのチンピラSPさん、もう来ないの?……ちょっとお話が面白い方だったのに残念」 厨房の方からザンガンの慌てる声が聞こえた。 「大丈夫か!クラウド!?」 「………何でもない……ちょっと、ごめん」 言い終わらないうちに店の裏手から飛び出して行った。 「………」 ティファに目配せをされたヴィンセントが追って出て行った。 裏手に回ると、クラウドが路地裏に入り込み大きなポリバケツで身を隠すようにして膝を抱え泣いていた。 人が来た気配にクラウドが怒鳴った。 「ちょ、調子悪っいだけ!来るなっ!」 だがヴィンセントはそのままツカツカとクラウドが身を隠すポリバケツまでやってきて座った。 「……泣ける時は泣けるだけとことん、枯れ果てるまで泣いておけ 枯れた分だけ心が軽くなって前に進める 大人になれば泣きたくても泣けない事の方が多くなる。その分だけ心が重くなる」 「っざ、っけんな!同じ年のくせに大人ぶるな!」 強い言葉で返しながらもヴィンセントの距離を取った優しさにクラウドは更に涙が止まらなくなってしまった。 狭い路地の中、ヴィンセントの座った場所は表側から人が入って来れなくなる場所、そして蹲るクラウドの姿を隠す位置だった。 そして陰キャラ2人いなくなったのを心配して探してやって来たザックスだったが、路地裏生ごみ置き場から恐ろしいマイナスオーラと陰気オーラが相乗効果を発揮している現場を見つけてしまった。 真っ青になり店に戻ったザックスは、心配して待っていた皆に寒気に腕を擦りながら報告した。 「自主的に戻ってくるまでは近寄らない方がいい 裏手に超強力なブラックホールができてる!」 ヴィンセント、クラウド共に付き合いもそれなりになっている皆は、2人の現場がどんな状態になっているのかリアルに想像がつき、同じく青褪め首を横に振った。 そしてティファはヴィンセントを召喚して正解だった…と少し胸をなでおろした。 2か月後 お店の移転2周年記念フェアを3日間通し、大忙しのお祭り騒ぎが終了しホッと一息ついたそんな日常に戻った日。 2時上がりのクラウドが店の裏手から出たところ、赤髪のレノが立っていた。 驚き固まったクラウドだったが、直ぐにそのまま無視して歩き始めた。 「クラウド!」 返事もせずに走り始めた。が、それをレノが腕をつかみ引き留めたがその瞬間、驚いたことにレノ自身がうめき声をあげて手を離した。 何もしていないのに呻かれ驚き、うっかり立ち止まり振り返ってしまったクラウドだったが、我に返ってまた走り始めようとしたところレノが悲鳴の様に呼び止めた。 「待てよ!クラウド!」 何だかレノの妙な様子にまたクラウドは立ち止まってしまった。 「………2か月前に骨ボキボキイッちまって入院してた。ハハ…カッコワリ… まだ少しだけ本調子じゃねーんだ」 情けない顔をして言った。 SPが入れ替わったっていうのは怪我をしたからなのか?と、驚いたが、それでもクラウドが黙っていると、レノが小さな紙を1枚渡してきた。 「話がしたい。待ってる」 渡された紙を見ると、それは名刺で「L&R興信所 所長レノ」とあり、事務所の住所がなんと!店と同じ町内だった。 どういう事なのか。 同じ町内にレノの興信所?こっちに越してきたということか?ミッドガルの家は?家族は?あれ、そもそもレノに家族はいたのか? 知りたきゃ教えてやると言っていたレノだったが、結局クラウドはレノの事を何も知らないままだったのをこの時初めて気が付いた。 何故?と考えた時、レノはクラウドの話は何でも聞きたがるが自分の話はしないか、いつも適当にはぐらかしていた事に気が付いた。 同時にそんな根本的な事すら気にかけていなかった自分の浅慮、薄情さにも気が付いてしまった。 でもレノだってちゃんと向き合ってくれてたわけじゃない、いつだって甘ったるい胸やけがしそうな気持ち悪い言葉をベラベラ吐くくせに、いつまで経っても大勢の中のいつでも取り換えが効く駒から出してくれなかった。 忙しそうなレノが時間と大金をかけてグラスランドまで来てくれるのだからそのうちきっと、ちゃんと他を整理して向き合ってくれる。 そんな愚かな期待した事が悲しくて悔しくて恥ずかしくて、救いようもない馬鹿な自分に絶望した。 二度とパン屋の外の世界となんか関わるもんか!ほらみろ!外の世界は酷い奴らばっかりだ!…そう決意したら少しだけ楽になった。 でも…… 翌日仕事上がりにクラウドはコッソリと名刺の住所に行ってみた。 ビルエントランスにある案内板を確認すると、1階が小物屋、2、3階が美容院、4階から上が其々の会社、事務所が入っている雑居ビルだった。 迷ったがR&R興信所が入っている5階に行ってみると、ドアが3つあり、1つが何もプレートが出ていないドア、でも何かの事務所。人がいる気配がする。1つがナントカ物産、もう一つが「L&R興信所」だった。 そしてR&R興信所の透かし窓部分に「只今外出中、御用の方は〇〇〇ー〇〇〇〇へ」と携帯の電話番号が書かれたプレートが入っていた。 名刺の事務所が本当に存在している。 本当にレノがこっちに越して来たのだろうか。………何があったのか。 怪我して入院してたと言っていた。まだあまり良くないみたいだった。 2か月前の怪我で今あの状態なら酷い怪我だったのだろう。だからSPを辞めたのか?興信所って何? …でも結局、もう関係ない。 レノなんか嫌いだ。あんな苦しい思いは2度と嫌だ。皆に気を遣わせてしまうのももう嫌だ。 帰ろう!とエレベーターのボタンを押した。 1階から2.3.4とエレベーターが上がってきて、5階に着いた。 ドアが開いた時、中に人が入っていた。 サングラスをしたスキンヘッドのえらく体格のいい男が下りて来た。 サングラスの奥からジロジロ見られる視線を感じたが、無視してエレベーターに乗り込もうとした時、不意に襟の後ろを掴まれた。 「え…」 ピッ… 「来た」 クラウドが驚くのと同時に男は携帯に話していた。 携帯の向こうからレノの声がした。 『引き止めろ!30分で着く!直ぐ逃げるぞ!抜かるな!』 「借りは返した」 『ッシャーーーーーー!!』 「え!?」 襟を持たれたまま無理矢理L&R事務所に引きずっていかれ、応接テーブルの様なガラステーブルと椅子の方に連れてこられ、座らされるのかと思ったその時、ガチャッ、ジジジ…と音がしたと同時に手首に冷たい感触がして見てみれば…手錠が手首とテーブルの脚棚部分に繋がれていた。「………」 手錠。 人生で初めて見た。 そして自分の手首にかかっている。 驚いてスキンヘッドの男を見ると、以前レノが言っていた同僚のハゲを思い出した。 「………ルード」 思わず呟いた。 「そうだ。レノとルードで『L&R』」 何を考えているのか分からないが、人をテーブルに手錠で繋ぎ床に直に座らせておきながら、ルードは接客用椅子にどっかりと座っている。 「汚い事も醜い事も狡い事も、一度は飲み込んでみた事はあるか」 「……え」 真っ黒のサングラスをしているせいなのか表情が変わらず、威圧感があって怖い。 「お前が世間知らずでいられるのは周囲がお前の代わりに泥も毒も糞も被っているからだ 分かっていながらお前はそのままでいるのか」 「………」 「レノを襲撃したのはティファちゃん。3週間入院し今もリハビリを続けている あの子をそうさせたのはお前」 「ティファ?なんで?」 「お前、いつまであの娘に甘えるつもりだ。いつまで守られているつもりだ。いつまであの子に泥をかぶらせ、お前だけ世間知らずでいるつもりだ お前以外と寝るレノは駄目なのか。汚いのか だったら他に行かないような努力をお前は少しでもしたのか。行くなと一言でも言ったか 一対一で付き合うのがそんなに偉いのか。常識か それはレノの今までの生き方を否定する事と同じだが、それでもお前は否定できるのか その時その場で使い捨ての恋をしてきたのは、そういう環境で生きてきたからだ お前は大切な人に捨てられたことが一度でもあるのか 全てを失くしたことがあるのか レノの不誠実さに傷ついたか?二股どころか3,4,5いくらでもしてるような男と付き合って後悔したか? それで周りに守られて結局お前は囲われた場所から一歩も出ず、何も失いもせず変わりもしない レノはお前に捨てられ、重傷を負い、仕事を失い、今まで築いてきた全てをレノ自身が捨てた そして、ただお前に合わせるだけの為にここに来た それがどういう事かお前に分かるか レノがどんな修羅場を何度潜って来たのか一度でも考えたことはあるか 周りを振り回して、汚して、泥水を飲ませて、自分一人だけいつまで動かず変わらずにいるつもりだ 俺にはレノではなく、お前が酷く醜い汚い怪物に見える」 一言も、クラウドは返せなかった。 そしてルードもそれ以上は一言も喋らなかった。 リフォームされたばかりの事務所に白々とした空気が漂った。 フ…と、ルードが何かに気付いたように立ち上がり、事務所ドアを開けると同時にレノがゼーゼー言いながら青褪め入って来た。 そして入れ違いにルードが出て行った。 「代わりに行く。貸し1つ」 「OK、サンキュー!」 ルードが出てくのと入れ替わりにレノが同じように椅子に座った。 「ちょっと、待ってくれ、、走って、来たから、、」 そのままひじ掛けに倒れ込み、しばらくゼーゼーと荒く息をしていたが、やがて落ち着いてきたところでテーブル脚に手錠で繋がれ床にペタンと座り込んでいるクラウドをチラッと見て、、 「似合い過ぎ……」 クラウドに聞こえないよう口の中で呟いた。 ルードに乱暴に扱われたらしく、シャツの襟元の釦が1つ飛んでるし服を後ろから引っ張った皺があり、クラウドの首が少し赤くなっている。 ルードは女には優しいが男には遠慮がない。 だがそれが逆に瀕死状態にあったレノの懲りない素敵インスピレーションを刺激しまくった。 クラちゃん惜しい!!乱れた服をできるだけ整えた形跡があるが、そういう事は俺への思いやり的にするべきじゃねえ!てか、できるなら胸元とか鎖骨が見えるくらい開けておいてくれた方が、…いや乳首が見えるくらい開け…いやいっそ、ビリビリに破れていた方が、いや、いや、むしろシャツ1枚で他は何も身に着けていない方が俺的元気100倍……!違う!違う!今はそんな場合じゃねぇんだ!これからマジな話を…… とは思っても”ルード、手錠プレイグッジョブ!!さすが相棒だ!クラちゃん最高に似合ってる!仲直りしたら今度はちゃんと許可を取って手錠拘束プレイを……いや、だから今はそういう場合じゃない!俺達がバッドエンドからリトライできるかどうかの瀬戸際なんだ! レノは蘇り過ぎてついうっかり飛翔してしまいそうな素敵インスピレーションを頭を振って抑え込んだ。 「逃げない?ちゃんと話し合うならその手錠外す」 「………うん」 畜生!相変わらず可愛いベイビーめ!「うん」て何だよこの野郎!あ~~畜生!ベイビー!チューしたい!チューさせてくれ!!ペロペロしたい!ヤりてえ!とりあえず話し合いの前に1回ヤらせてくれ!それで落ち着いて……いやいや、そんな事はクラウドが許すわけがないのは分かり切ってますよ!はいはい!と再び洗濯脱水機状態でブンブンブンブン頭を振って煩悩を頭の中から振り払った。 手錠を外されたクラウドは床から椅子に座り直し、改めて事務所の中を見回した。 「……こっちに来たのか?」 「そうだぜ。もう超近距離だな!ちなみに住居はもっと近いぜ?」 「……へえ…」 「お前のマンション、10階に空き部屋があったの知ってた?」 事務所の中をあちこちと彷徨っていた視線がようやく戻って来た。 「10階……?」 「隣、行っていい?」 「……あ………」 答えを待たずレノはクラウドの隣に移動し、肩を触れ合わせ囁いた。 「なあ、俺達やり直そうぜ? 俺が間違ってた。悪かった。超反省した。絶対に同じ間違い繰り返さねぇ!だから、やり直そう?」 「…………」 クラウドは返事ができなかった。 ついさっきまでは二度と嫌だと思っていた。けれどルードの言葉が深く突き刺さっていた。 『いつまで変わらずにいるつもりだ』 「お前、オレんちに越して来いよ」 「は?」 「一緒に住めば俺が浮気すれば直ぐに分かるぜ?」 ま、お前の場合は一緒に住むどころかスーパー長距離でも会えば分かっちまう特技があるけどな。 この際それはちょっと脇に置いといて、だ。 「……そんなの分かりたくない」 俯くその薄い頬にレノが掠めるようにキスをしたが、クラウドは驚きはしたが逃げはしなかった。 「違う、クラウド。し・な・いつってんだよ。もう絶対に、2度とお前以外は抱かない。誓う 俺、ようやく分かったんだ。お前がいるなら他はいらない だから寂しがりのレノくんの傍にいてくれよ。もっとちゃんとお前と2人で愛し合おう これが本当のマンツーマン、なんつってな?」 「…………」 「笑って欲しいな、クラちゃん」 逃げなさそうなんで、今度は唇の横にキスした。…逃げねぇ。逸らしたままのクラウドの視線を戻す様に頬に触れ俺に向けさせる。だが瞳は頑なに逸らし泣きそうな顔をしている。あー……マジクソ可愛いベイビー!これが天然っつーんだからとんでもねぇエロエロエンジェルちゃんだ。 ギリギリまでクラウドを見つめながらゆっくりと顔を近づけ、唇を舐めて、吸って、噛んで、そして再び軽く唇を合わせた。 「俺の事、嫌い?」 「うん」 即答!?…OK!そんなの想定内よ! 今はプッシュ!プッシュ! 「気持ち、戻らない? もっとお前とキスしたい。他の事もしたい。していい?」 クラウドの返事を待たず、今度は抱きしめながら舌深くうねらせ滑り込ませ、時間をかけて甘く絡めに絡めた。 反応はイマイチだが、やっぱ抵抗は無い。 「俺くらい図々しくて狡いのがクラちゃんには丁度いいんだよ。間違いねえ 俺、お前にだけは誠実な男になるから。絶対になるから。な?ヤリ直そ?」 「…………」 唇だけじゃなくて瞳までうるうるさせちゃって!本当、可愛いなぁこの男は。あー、やべーっす、チンコ漲ってきたぁ。 「愛してる、クラウド」 「嘘、つけ」 …どうも……反応がおかしい。拒否は口だけ、体は全然逃げてねぇ。 これ、昨日とは様子が違いすぎねぇか?どうしちゃった?あれから何かあったの?つっても、イケる時にはいっとくけど。 利用できるモンはする!押し時は逃さない!これレノ鉄則! ちゃんとクラウドとの関係が修復できてから切り出そうと思っていた事を今進めておく。 「前から思ってたけどパン屋の仕事、ママにはキツクね? お前は俺の家に住むからさ(断定)、逆にママは俺っちの事務で働けば丁度良くね? 俺とルード、両方ともデスクワークが苦手で嫌いだからママが事務に来てくれたら超助かる。勿論今の給料は保証する それにママがここの事務所仕切ってくれたら仕事でも俺を監視できるぜ? な?お前が迷ってるのは俺を信用できないからだろ?丁度いいじゃん。仕事でもプライベートでも監視できるぜ? あとできればティファちゃんもウチの調査員に欲しいナ」 「………お前を襲撃したのティファなんだろ?」 「あれ、バレてた? あんなに可愛い女の子に本職SPがボロ負けしたとか、ハジカシくって知られたくなかったぜ!ハハッ!」 何でバレたんだ?あの子が自分で言うワケねぇよな…。 「何でティファ?」 「ティファちゃんが怒ったのは俺が悪かったからだ。そこはちゃんと納得してるし、反省もした。それでもう終わりだ で、だ。フツーに考えてあの子は滅茶苦茶有能な調査員になる 俺らの仕事は時々荒っぽい事があったりするんだが、その点ティファちゃんなら腕っぷしも良い、状況に流されない、色仕掛けも使える、人を見抜く勘もいい、あの子は超優良調査員になる!俺とルードで育てるから間違いない! だからママとティファちゃんをウチにスカウトしていい?」 「そんなの俺が決める事じゃ……」 口ごもるクラウドに言い方を変えてやる。 「ママはお前の弱さを気にしない。ティファちゃんはお前に優しすぎる。 2人とも自分よりもお前を大切にして守って来た。そうだろ? でも男が女の子に甘えちゃダメだぜ?お前、とっくに成人してる男なんだからよ」 「………」 傷つくだろうと思ってはいたがやっぱり傷ついた顔をする。 だがそれでも言わなきゃならない。そうでなきゃクラウドは俺の所に来ねーからな! お前を俺のものにするためなら何だってやってやるぜ!お前が傷つくとしても! お前の傷も痛みも俺が舐めて治してやればいいだけだ。 「クラウド。今度からは俺に守らせてくれ お前が仕事で躓いた時も、悩んだ時も、俺が聞いてやる、対処してやる」 「そんなの解決になってない!俺!…俺、………ちゃんと大人に……」 あ……分かった。コレ、ルードだな!? この困惑っぷりはアイツだ。 あのアホみてーに甘々綿菓子連中じゃクラウドにこうは言わせられねぇ。 さすが相棒!あの極悪非道鬼畜阿修羅堕天使ティファちゃんに特攻するだけある!グッジョブ!! 「なってるよ、お前はちゃんと。俺とお前は大人の付き合いだし、男同士の付き合いだし、恋人同士だ あとはお前に少しだけ優しすぎる人と距離を置いたら完璧だ! その代わりこれからは何でも俺に相談しろ。俺の事も気になった事は遠慮しないで言ってくれ。俺はちゃんと受け止められる 立派な大人は大抵そうしてる 旦那は奥さんに相談して、奥さんは旦那に相談して、そうして外じゃ皆何でもない顔してんだ 一人で何でも解決してる奴なんていねーんだよ お前には恋人の俺がいる!遠慮すんな!俺らは(体の)相性バッチリだ!それはお前も分かってるよな!? この先も2人でなら何とかなる。一緒にやっていこうぜ?な!?」 「……」 「なあ~?クラちゃーん??」 このままじゃヤバイと思ってはいても不安でいっぱいなんだろう。 …それでもお前は…… 顔を僅かに背け目を逸らしたまま、微かに、戸惑い、迷いながらも、頷いた。 よっしゃーーーーーーーーーー!!イタダキーーーーーーーーー!!! あ、只今下半身も充電完了しましたですーーーーーーーーーーーーーーーー!!! そうだよ!お前はそういう奴だ!だから大好きだぜーーーーーーーーーーーーーーー!!! 「ところでクラウド、今ここはセックスすべき流れだと思うんだが、俺骨折がまだ響いていまいち力を入れられねーんだ」 「じゃあしばらくお預けだ」 不安そうに、にこっと笑うクラウド。…いいね、この流され体質め!そんなお前がラブラブラブリー! ……俺さ、今まで好みのストライクゾーンがメチャンコ広いと思ってたが、実は極狭だったのかも知れねぇ。 入院中に思い知った。 お前の不安定な仕草やアレの時のアレコレ一つ一つ思い出しては、この身体が反応した。 こんな事今まで一度も無かったんだ。いつも計算できる、コントロールできる恋しかしてなかった。 だから今の俺がスゲーアホカッコ悪りぃのは分かってる。 でも自分的にカナリイイ感じなんだ。 アホで最弱で流され体質のお前にトチ狂ってるのに、コレ、俺的に正解見つけた!って感じなんだ。 意味わかんねーよな。自分でもそう思ってるぜ。 でもコレがいいんだ!そんなお前がいい、欲しい。他はいらねえ! 「ちっげーよ!ヤる時はヤるべきなの!だから今日はクラちゃんが上!」 「え…」 「騎乗位!俺の上に乗っかってこの可愛い小さなお尻でシェイクシェイク!グライン!グライン!やるんだよ!やって!ダーリン、カモン!」 クラウドの尻を軽く揉んでやった。 「……!」 うは、焦ってる顔がまた可愛い。クッソ可愛い!もーーーこの野郎!ヤらなきゃ収まらねえ!!チンコ爆発しちゃう! 「ホラ、骨はヘロヘロだけどコッチは絶好調だぜ!触ってみそ! 俺、あのホテルでお前と別れてからずっとマジで童貞くんだったんだぜ? ご褒美に早くお前のこの可愛いお尻に俺チンコをコンニチワー!させてくれよ! もーーーエンジン全開!早くしないと出ちゃう!ホラ!勃つよー!ホラホラ、見て見て!どんどん勃ってきてるぅ~!出ちゃう!出ちゃう!外じゃなくてクラちゃんの中に”ただいまー!”させてくれ! ゴムは付けるからぁ!早く!早くぅ!今なら俺三こすり半でイケルぜ!」 尻を揉みながら元気100倍になってズボンの布を押し上げている箇所にクラウドの手を導いた。 「……っ!」 反射的に手を引っ込めようとしたクラウドだったが、その急な仕草にまだ衝撃に弱い俺の腕に痛みが走り、思わず手から力が抜けた。 畜生!……カッコワリィなマジ俺。 「………」 クラウドが徐に床に膝をつき、俺の足の間に入って来た。 「おおおわ!ど、どした!」 この態勢は!!!!! 俺のベルトを寛げ、ファスナーを下ろし……これは!!やべえ!!まさかのフェラ!! 今まで一度もやってくれたことないのに!お、おおお、、クラウドがやってくれると思うだけでいきなりクライマックス!!あぁやべえ!!マジでヤベェ! ビンビンに漲ったのをパンツから取り出し両手で握り、キスをし、く、口に……! ううおおおおお落ち着けえええええ俺えええ!!!出ちゃううううううううう!!!激萎えの何かを考えろおおお!!NOW!!ライトナウ!!なうなうなうなう!! ああああああさすがクラウド!!フェラチオ下手くそおぉ!!歯が当たってるうう!!!だがそこがいい!!この下手くそさがチンコにズッキュンズッキュンクるんだよおぉぉぉ!!!あああああやっべえ!クラちゃんの小さなお口いっぱいに俺のあああぁぁぁ!!このビジュアル最高ーーー!!!マジで直ぐにイク!いっちゃう!!クールに!クールに! クール!クール!…クールって何だっけ!?いや、今はそんなのどうでもいい!気を散らせ!!もっとフェラして欲しいからあああああああああ!ちっちゃなお口にいっぱいに頬張って!!可愛いお口が俺のチンコでギュポギュポおあええ!ああああああ他の事!他の事! ……を考えようとしてウッカリさっきのクラウドの手錠姿を思い浮かべてしまった。 クラウドとの関係が完全に修復できたら手錠監禁プレイ(いつの間にかレベルアップ)……ベッド支柱に繋いで…あ… あぁ…。 クラウドがせき込んでいる。……飲んじゃったんだな……口端から溢れてドロリ…と…… やー……たまんねぇなぁクラウド…マジヤベェぜ、最高……。ごめん、予告できなかった。しかも超濃いぃだろ。だってあれ以来マジで童貞くんだったからな。 「も~~~~!ビックリするじゃねえか!クラちゃん可愛過ぎ!」 俺の股間に蹲っているクラウドを持ち上げ抱きしめた。 すると口を押えたクラウドが身動ぎ…戸惑うように、マズそうに吐きそうな顔して囁いた。 「……洗面所どこ?」 デスヨネー!この正直者!! 「愛してる、ダーリン!!」 |